オリヴィアの可愛らしさにやられたけど、全体としてはイマイチ〜RSC『十二夜』

 ロイヤルシェイクスピアカンパニーの『十二夜』を見てきた。ひとつひとつのパーツをとってみると結構楽しめるとこも多いし、とくに役者がすごく頑張っていて良かったのだが、全体的になんとなく違和感があって心から面白いと思えなかった。



 まず違和感についてだが、とりあえず全体の美術・衣装・音楽が半端に中東っぽいのがダメだったんだと思う。あとで見たところ、設定はバイロンが活躍していた19世紀頃のギリシャアルバニアらしいのだが、なんか上流階級の人たち(主人公4人)はヨーロッパ式の服装なのに、召使い(マライアとか)は中東系の服装なのがなんか気になった。セットが波を模したデザインだったりとか、いろいろな人が交流する貿易の要所としての地中海を表現したかったのかもしれないとは思うのだが、全体として、ギリシャに舞台を設定したのがあまり機能しているとは思えなかった。


 …ただ、オルシーノがちょっとトルコっぽい半ズボンに裸足にサンダルを履いて出てくるのはちょっとまあその、良かったかもしれない。オルシーノが部下を引き連れて海で泳いだという設定で半裸で出てきてシザーリオにタオルを渡してもらう演出は地中海っぽいと言えるかもしれないのだが、これ以上この場面について書くと私の偏見が露呈されそうなのでやめておく。
 

 オルシーノが十分セクシーだったのは驚きなのだが、女優陣がえらく好演していてちょっと影が薄くなった気も…ヴァイオラ役のナンシー・キャロルがほんとに若くて男の子っぽいのに対して、オリヴィア役のアレクサンドラ・ギルブレスは少し年上で落ち着いたお屋敷の女主人というふうに演出されていたのだが、このオリヴィアがえらく可愛くてすっかりやられた。いつもはとてもしっかりしていて品が良くてちょっと気位が高いのに、シザーリオ(ヴァイオラ)がオルシーノのかわりに求愛に来て、「あなたの家の前に柳の小屋を造って嘆きます」と言う場面で劇的にシザーリオに惚れ込んでしまうところが大変ドラマティックでわかりやすい。その後オリヴィアが、いつもは冷静なのにヴァイオラがシザーリオとして出てくるたびにものすごいテンションで求愛して、最後はセバスチャンをシザーリオと間違えてウエディングドレスで結婚を迫るところがまあおかしいやら可愛いやらで、すっかりやられてしまった。あんまり面白いとは思えないとこもあったけど、このオリヴィアの頑張りで点が甘くなっちゃうかも。