木に化けるところがよいが、映像クオリティは…ブラックフライアーズ劇場『十二夜』(配信)

 ブラックフライアーズ劇場がMarquee TVで有料配信している『十二夜』を見た。ダン・ハッセ演出で、客席はソーシャルディスタンシングし、有料配信もするというやり方で劇場を再開した公演である。こちらも新型コロナウイルス対策だと思うのだが、90分くらいに刈り込んで休憩もないスピーディな上演になっている。シンプルなセットで、ブラックフライアーズ劇場特有のステージ上の客席はなくなっており、これも感染症対策だと思われる。

 

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 笑うところはたくさんあり、とくにマルヴォーリオ(マイケル・マノッキオ)が手紙を読むところはとても可笑しい。サー・トウビー(ジョン・ハレル)たちが、庭で植物の蔓を這わせるため円錐の上をカットしてスカートのフープみたいな形にした支柱に隠れ、バラの花なんかをかぶって木のフリをするところは視覚だけで笑える(この支柱は後でマルヴォーリオいじめのところでもマルヴォーリオの檻として使われる)。マルヴォーリオがわりと若くてハンサムなのだがとても不機嫌そうで、もともと自分のそこそこカッコいい容姿を過信している勘違い野郎みたいに作ってあるのも良い。この若々しいマルヴォーリオが欺された後、調子にのって18世紀のマカロニみたいな格好で出てくるところは本当にものすごく伊達男ぶっており、ある意味で板についているところが余計おかしい。

 ただ、こういう脇筋に比べると少し本筋は見劣りするかなーと思った。ヴァイオラとセバスチャンについてはコイントスで毎日とっかえひっかえミア・ワーガフトとゾーイ・スピアズが演じるという方式なのだが、この配信された上演はワーガフトがヴァイオラ、スピアズがセバスチャンである。ワーガフトは『イモジェン』でヒロインをつとめていた女優さんで、悪くは無いのだがちょっと喜劇にしては真面目すぎ、シザーリオになった時のふざけた生意気さが薄いような印象を受けた。去年見たスピアズのクレオパトラ役が大変素晴らしかったので、正直ヴァイオラがスピアズ役のを見てみたかった気もする。たぶんブランドン・カーターのオーシーノとお似合いだったのではと思う。

 なお、Marquee TVになっても映像のクオリティはかなり悪い。最初と途中におそらくトラブルで全く音が入らなくなるところがあるし、たまに映像が乱れたり、音と口があってなかったりするところがある。全体的に画質もあんまり良くは無く、とくに引きで撮るところがボケ気味だと思う。これは本当になんとかしてほしい。