『ヘンリー四世』第一部、グローブ座

 グローブ座で『ヘンリー四世』第一部を見てきた。


 これは第二部まである芝居の前半で、後半は7月に始まるのでちょっと全部見ないと何とも言えないというところもあるのだが、第一部だけとしては結構面白かったのでは…と思う。

 とりあえずフォルスタッフ役のロジャー・アラムがとても愉快だし、プリンス・ハル役のジェイミー・パーカーはいかにも「不良化した王子様」風で私の好み…だった(←自分の趣味で申し訳ない)。プリンス・ハルって戯曲を読んでいる限りでは嫌なヤツなのだが、舞台に出てくるとなんかすごく魅力があるような気がする。この二人の掛け合いはとてもテンポが良くて、とくに酒場でフォルスタッフが嘘をついて自慢をする場面は爆笑もの。

 一方で後半の展開を見据えて厳しい感じの演出をしているところもあり、王様ごっこの場面ではハルが意外とフォルスタッフに冷たく振る舞ったりするあたり、第二部でのフォルスタッフ追放を暗示しているのではないか…という気がする。この王様ごっこの場面はフォルスタッフがいわゆるお祭りの"mock-king"(偽王)であることを示していて、最後のフォルスタッフ拒絶は祭りを終わらせる際の偽王の殺害を象徴しているのではないかと思うのだが、上演してみるとまさにそういう感じ。まあこれも全部見ないとわからないのだが…

 あと、ホットスパー役のサム・クレーンもなんかカッコよかった。ホットスパーはもともとすごくいい役だと思うのだが、愉快だけど腹に一物あるハルと血気盛んで直情径行型のホットスパーの対比がしっかり出てて、タイプの違ういい男を楽しめるという点で私は面白かった。


 しかしながら、『ヘンリー四世』第一部は、いい場面はほとんどフォルスタッフが持ってっちゃうのに最後はヘンリー四世とハルの勝利で終わるという点でやっぱり「史劇」なんだろうなぁ…という気がする。しかしながらそれではやはり客が物足りないので、最後にフォルスタッフが登場してその先導で踊りが始まる。フォルスタッフはエリザベス朝の舞台でも大変人気があったらしいので、案外最後はこういうふうにフォルスタッフの先導で舞台で踊ったりして客を楽しませていたのかもしれないと思う。