ゲーム・オブ・ザ・ローゼズ〜明治大学シェイクスピアプロジェクト『薔薇戦争』

 明治大学シェイクスピアプロジェクト『薔薇戦争』を見てきた。このプロジェクトシリーズを見るのは初めてである。第一部で『ヘンリー六世』三部作、第二部で『リチャード三世』、全部で3時間15分くらいかかるというものだ。

 セットは奥に階段があり、ついたてをたくさん使用するものだが背景転換などはなく、道具類もわりとシンプルだ。着るものはかなり中世ふうだがたまに現代ふうでわざと時代をわかりにくくしているようなところもある。

 とりあえず前半の『ヘンリー六世』三部作(+『リチャード三世』の冒頭)部分は、たいへん長い芝居をダイジェストでやるみたいなものなのでとにかくものすごく全員憎み合って殺し合っており、もうしばらくは『ゲーム・オブ・スローンズ』を見なくてもいいくらい暴力でお腹いっぱいになる。一晩で薔薇戦争をやるからには仕方が無いのだが、ちょっと見ていて疲れるレベルだ。

 第二部の『リチャード三世』は、カットや『ヘンリー六世』三部作との辻褄をあわせるための変更があるがけっこう原形をとどめた芝居になっている。一番面白いのはリチャード役が女優であることで、さらに足を引きずるのではなく顔に傷があるという設定になっている。このリチャード役、プログラムを見るとどうも最初は男優がやる予定で途中で女優に変更されたようなのだが、主演女優がかなりうまかったし全体的にマスキュリニティの戯画化みたいな味わいが出てかえってよかったのではと思う。女優にやらせるという点では柿喰う客の『完熟リチャード三世』にちょっと似たところがあるかもしれない。

 『リチャード三世』は、場面をかなりカットしているわりには2人の王子殺害や、リチャードがアンを殺害するところなどが付け加えられており、むしろ残虐さについては原作より増強されているかもしれない。リチャードがアンを殺すところを舞台で見せるというのはマーティン・フリーマンバージョンでもやっていたが、最近の流行りなんだろうか。また、リチャードに対して今まで殺した人たちが夢に出てきて「絶望して死ね」と呪いをかける場面は、第一幕で登場した人まで出てきて亡霊大挙集合という感じになった。

 学生演劇としてはかなりレベルが高く、最後まで面白く見ることができた。実は来年は薔薇戦争史劇の研究をするつもりでいるので、見られてよかったな…