カッコ悪かった時代のストーンズを描く『ストーンズ・イン・エグザイル』と、どうってことないスパイスリラー『ソルト』

 『ストーンズ・イン・エグザイル』と『ソルト』を見てきた。


 『ストーンズ・イン・エグザイル』は南仏で『メインストリートのならず者』を録ってた頃のストーンズに関するドキュメンタリーである。貴重な写真や映像がいっぱい出てくるのだが、正直ストーンズがあまりにもいい加減すぎて一体どうやって曲を作っていたのか正直よくわからなかった…まあそこがストーンズらしいといえばストーンズらしいのだが。ストーンズの面々は税金が高すぎるという超カッコ悪い理由(本人たちもこの理由があまりにもカッコ悪いことについては認めていた。ミック・ジャガーLSE出身で国税局に就職を考えていたくらいだから金のことには抜け目ないミドルクラスだ)で南仏に逃げて、ドラッグ漬けのキースのお屋敷の地下で録音をしはじめたらしい。しかしながらキースは始終ラリっていたようで「オレはインスピレーションさえあれば何日でも弾いていられたよ」的なことしか言わないから一体どのように曲を作っていたのかとかはよくわかんないし(まあそれがキースなのだが)、ミック・ジャガーも「『ダイスをころがせ』の歌詞はサイコロ賭博が好きな家政婦のおばちゃんと話してて思いついた」とか「『カジノブギー』の歌詞は適当にフレーズを書いた紙をそのへんにばらまいてキースと拾って作った」とか、たまには面白い曲作り秘話を披露してくれる程度で、そういう秘話も結構ストーンズのいい加減さを示すものが多い(それでもミックは外目にはそう見えないがかなり完璧主義的な感じで、たぶん一番考えて曲を作ってる感じだった。ミックがいなかったら、ブライアンが抜けた後ストーンズはきっと一枚もアルバム作れなかったんじゃない?)。ビートルズのドキュメンタリーとか見てるとなんかもうビートルズというのはいくらお互いに仲が悪かろうと馬車馬のように勤勉に曲を作る連中なんだなって感じがするし(仲が悪かったらそれをネタに曲を作る)、クイーンだとメンバー全員がソロでもやっていけるくらい能力があるのにビジネス上の理由でパートナーシップを組んでやっぱり仕事だけはすごい勢いでやってるという感じがするのだが、ストーンズはなんかもう子供までいるオヤジどもなのに大人げない理由でケンカしてたりとか、全く中流階級の頭だけは切れる不良どもが大きくなったような感じである。

 なお、この映画にはほんの一瞬、ジャック・ホワイト、ベニチオ・デル・トロシェリル・クロウなどがコメンテイターとして出演。ジャックとシェリルは『シャイン・ア・ライト』にも出てたっけ?



 『ソルト』はふとアンジェリーナ・ジョリーが見たくなったから出かけてみてきたのだが、どうってことないふつうのスパイスリラーだった。しかしながらアンジーの男装だけは一見の価値があると思う。
 …しかしながら『ソルト』は話自体は「過去を失った女スパイが愛をとるか仕事をとるか」って話で『ニキータ』にそっくりだと思うのだが、女優の魅力とかアクションのキレという点では遜色ないと思うんだけど(むしろ私はアンヌ・パリローよりもアンジーのほうが好きだ)、『ニキータ』よりはるかに手に汗握る感が少なくて、今はともかく(ともかく!)若い頃のリュック・ベッソンはすごかったんだなぁと今更ながら感心した。『ニキータ』のバリエーションとしては『シュリ』とか予算規模をもっと大きくした亜流がいっぱいあるのだが、かなりの低予算なのに『ニキータ』のほうがはるかに見ていて面白いよなぁ…やっぱり脚本の出来のせいなんだろうか。