バーレスク・ホール・オヴ・フェイム2022(配信)

 ラスベガスで開催されたバーレスク・ホール・オヴ・フェイム・ウィークエンドのメインコンペティションが有料配信されるというので見た。アメリカで土曜の夜の時間帯になり、日本では日曜の昼なので時差ボケにならずに見られる。

 ベストデビューは8名がエントリーしている。最初はニッキー・ナインドアーズのバーリーポールから始まるのだが、ポールが必要な演目はあまり多くないので新鮮だった。それから紫が基調のふわっとした衣装でエンヤの「オンリー・タイム」から始まって尖った感じになるアメリカのベレッタ・ブリストル、緑の衣装でワイルドな感じから途中で曲が"I Want You"に変わって黄色いファンを使ったファンダンスになるヴァレリー・ヴェイルズ、柔軟性の高いアパシー・エンジェル、キラキラのヘッドドレスが途中で扇になるジョイ・ライダー、アフロテイストでダイナミックなザイラ・リー・ヴァニティ、レッド・ツェッペリンの"I Can’t Quit You Baby"にあわせたマディスン・ジェーン(ペイジのギターにうまいこと動きを合わせていてよかった)と続く。

 

 スモールグループ部門は4組がエントリーしている。飛行機の客室乗務員が束の間の情事を愉しむ寸劇風なハウス・オヴ・ハッシュが最初である。次がホリー・レベル・アンド・ザ・プラスティック・ファンタスティック・ケンなのだが、これはちょっとあまり見たことのないような悲しい内容の演目で、ケネディ暗殺後のジャッキーがヒロインである。血まみれのピンクのスーツを着たジャッキーが憔悴して出てきて喪服に着替え、葬儀の後に血まみれのケネディの亡霊というか幻影に服を脱ぎながらキスするというもので、非常に演劇的だし、よくできている(あまりセクシーではなく、悲劇的だ)。その後はアクロバット風なミッドナイト・フォックスィズ、社交ダンスみたいだがロープを使ってパートナーを止めるなどけこう力のいる動きもあるミッドナイト・メイヘムが続く。

 

 ラージグループ部門は3組がエントリーしている。ゴミ袋っぽい衣装でなんか食べたりするフォリー・ミクスチャ、テイラー・スウィフトの"We Are Never Ever Getting Back Together"にあわせてこれもティッシュペーパーを散らかした後ビヨンセの"Single Ladies"になるタッシュ!バーレスクと、ステージにゴミを散らかす演目が2つ続いてちょっと流行ってるのかな…と思った。3組目のファット・ボトムド・キャバレーはアフリカ系女性中心のグループで、ビヨンセの「フリーダム」を使い、コリン・キャパニックとかBLM、ボディポジティヴなどがテーマで、ゴミ系の演目が続いた後ではかなり雰囲気が違って新鮮だ。

 

 インターバルと授賞式があった後、ボーイレスク部門が始まる。司会が堅苦しいジェンダーバイナリシステムを軽くジョークでディスったあと、5組が出演した。"I Put a Spell on You"にあわせてアンドロジェナスな踊りを見せるジェイク・デュプリー、『黒いジャガー』のテーマを使ってブラックスプロイテーション風のサムソン・ナイト(ふんどし?にデカデカと「シャフト」と英語で書いてあるのは笑った)、クイーンの「サムバディ・トゥ・ラヴ」で始まり、愛を探した末に「アイ・ガット・ユー・ベイブ」で愛を見つけてハーフ&ハーフ(半身ずつ別の衣装をつけて1人2役をつとめる演目)のカップルになるジェイムズ・アンド・ジャイアント・ペイスティ、赤くて大きなファンを使い、トウで立って踊るクリス・オー!、「シネマ・イタリアーノ」に会わせて踊るまくるP・ノーノワールが続く。

 最後のカテゴリはミス・エキゾティック・ワールド(女性バーレスクパフォーマー)で、10名がエントリーしている。黒いドレスに輪の形の緑のボアを組み合わせたダイ・ラヴリーの後、車椅子にのって天使の羽みたいなふわふわの可愛い衣装を着ているジャクリーン・ボックスが出てくるのだが、何かの装置の近くに立つと十秒で服を引っかけてしまうレベルで不器用な人間からすると、車椅子に羽根などを引っかけずにあんなに優雅に動けるのが不思議である。それからカエル型エイリアンみたいな衣装でユーモラスなJ・フォン・ストラットン、大きめの赤いボアを振り回すダイナミックなミス・アクロリシャス、水玉のガウンでティーズをうまく使うモスカート・スカイ(トランス/ノンバイナリのパフォーマーでキャッチフレーズが"The Them Fatale of Burlesque"だそうで、オシャレなフレーズである)、黒い衣装でヘッドドレスが豪華なノックス・フォールズ、青紫が基調の衣装で髪のブレイドの使い方が特徴的なルールー・ラ・ダッチェス・デリエール、これも青が基調の衣装のエレクトラ・キュート、ドレスの仕込みに一工夫あって一瞬で脱げたり、脱いだ衣装の一部がロイ・フラー風のウィングになったりするアリア・デラノーチェ、「ラクリモサ」で始まるミス・アリサ・キットと続く。

 

 その後、2019年ラージグループチャンピオンのモッド・カルーセル(これにはモスカート・スカイも入っている)のパフォーマンスがあったのだが、途中まで音が不調になるトラブルがあった。その後に2019年のボーイレスク優勝者であるジョシュア・ディーンのパフォーマンスがあり、これはロードの「ロイヤルズ」にのって、カラフルな衣装で王冠をかぶってウィングも使って蝶の舞いみたいなのを披露した後、エアリアルシルクになるというものである。

 

 賞はいろいろあるのだが、ベストデビューがジョイライダー、スモールグループ賞がミッドナイト・メイヘム、ラージグルーブ賞がファット・ボトムド・キャバレー、ボーイレスク賞がP・ノーノワール、ミス・エキゾティック・ワールド3位がアリア・デラノーチェ、2位がモスカート・スカイ、1位がルールー・ラ・ダッチェス・デリエールだった。