バンクサイドローズ座『ヘンリー六世 第一部』

 バンクサイドローズで『ヘンリー六世 第一部』を見た。この演目を舞台で見るのは初めて。


 この演目は大きい舞台が必要なので、いつもは使わないローズ座の遺跡部分(ローズ座に行ったことがない人には非常にわかりにくいのだが、ローズ座は昔の劇場遺構にちっちゃい上演場所がくっついている。役者が動ける場所は前方の非常に狭い一画だけで、舞台の後ろにしめっぽくて丸い土の遺跡が広がっており、普段はここには入れない)も使用。スケール感は少し増えたが、遺跡の奥で芝居をする場面は非常に見えにくかったな…

 思ったよりも面白かったのだが、ちょっとヘンリー六世って英語で見るには難しい演目だなと思った。人が多いし、言い回しもシェイクスピアの初期の作品で後期のこなれた感じと違うし、あらすじも複雑だし…もう一度ちゃんと読み直したい芝居かも。

 役者はまあまあで、タルボットがとくに非常にパワフルで良かったように思う。ジャンヌ・ダルクは悪くはないがもうちょっと工夫が必要かな…この演出ではジャンヌをコミカルな役どころにしておらず(そういう演出も多いはず)、愛国心のために悪魔に魂を売った女性として描かれていたと思う。こういう解釈だと演出次第でいくらでもドラマティックな役柄になるだろうと思うのだが、中途半端というか台詞回しなどにめりはりが少なく、とくに最初のほうはもっと派手にやらないとダメだろうと思った。最後のほうはジャンヌ関係の演出は結構良くなって、イングランド軍に逮捕され、錯乱してわけのわからないことを口走る場面とか(ここは本来笑える場面のはずなのだがそうは演出してなかった)、一番最後の場面で暗い遺跡のど真ん中を歩きながら煙の中に消えていく(←磔刑を連想させる)という演出は非常に印象的だった。

 しかし、ローズ座はもうちょっと服飾デザインを工夫したほうがいいんじゃないのかな…イングランド軍もフランス軍もユリの紋章の服を着ていたせいで混乱するし(色が違ったが)、白を基調とした安っぽい衣装が多いのはいただけない。前の『エドワード二世』も着ているものはイマイチだったと思うのだが、現代ふうの衣装を中心にした『アントニークレオパトラ』はそう悪くなかったと思うので、ヘタに衣装作らないで現代の服をアレンジしたほうがいいんじゃないだろうか。