大英博物館「ハッジ〜イスラムのこころへの旅」(Hajj: Journey to the Heart of Islam)展

 大英博物館で「ハッジ〜イスラムのこころへの旅」(Hajj: Journey to the Heart of Islam)展を見てきた。軽い気持ちで見に行ったらなんかすごい充実しててびっくりした。聖地巡礼ってすごい大がかりなスピリチュアルイベントなんだな!

 メッカ巡礼の展示なんていったい何を展示するんだと思うかもしれないが、展示品は昔の巡礼ルートに関する考古学資料から現代の画像資料、統計や文書まで盛りだくさん。最初に一般的なメッカ巡礼に関する基本知識をツカミとして簡単に紹介したあと、古典的な五つの巡礼交易ルートを地図で紹介し、さらにそれぞれのルートに関わる考古学的遺物やルートを旅した人々の日記(西洋人や中国人など、所謂アラブ圏の人ではない人たちのものも)、統計、経済資料などを紹介し、最後はメッカの巡礼とはどういうものなのかをビデオや写真で説明するというもの。お客さんは巡礼の道を辿ってメッカに辿り着くというオシャレな構成になっている。

 とにかく巡礼がどのくらいイスラム文化の中で重要なのかということが大変よくわかるし、また巡礼というのは単にメッカに行ってお参りするだけではなく、旧約聖書に出てくるハガルや預言者ムハンマドの経験を追体験するため走って丘と拝殿を往復するとか聖なるザムザムの泉の水を飲むとか、いろいろな細かい儀礼からなるものだということがよくわかる。小石をぶつけて悪魔を追い払う儀礼とかはむしろ日本の節分に近い感じで親しみが持てる。巡礼関連の経済活動についての展示の大変興味深く、インドがブリテン支配下にあった時にトマス・クックが英国公認巡礼エージェント業で設けようとして失敗した話とか、巡礼鉄道をアラビアのロレンスが爆破した話とか、メッカでは世界中のお金が替えられるので巡礼者用の換金レシートみたいなやつが発行されているとか、聖なるものにも必ずくっついてくる世俗の商売の話がなかなか面白い。巡礼の人々が集まってくるということはお金が集まってくるということなのである。

 あまり派手ではないかもしれないが、とにかく巡礼のことがよくわかって面白い展覧会だし、あまりこんでいないので(アバヤを来たムスリマとか、イスラム教徒らしい家族連れとかがかなりたくさんいたのですいてるってわけでもないが)とてもオススメ。ロンドン在住者は騙されたと思って是非どうぞ。