イアン・ドナルドソン『ベン・ジョンソン伝』(Ian Donaldson, Ben Jonson: A Life, OUP 2011)

 BBCのヒストリーマガジンで褒められていたイアン・ドナルドソン『ベン・ジョンソン伝』(Ian Donaldson, Ben Jonson: A Life, OUP 2011)をやっと読んだ。500ページ以上ある大著でさらっと流し読みしただけなのだが一応簡単な感想を。

 全体としては古い史料(ジョンソンの人生についてはシェイクスピアに比べてたくさん史料がある)を使う一方新しい史料の発掘にも熱心なとても行き届いたジョンソン伝で、これからはたぶんこの伝記がジョンソンの人生に関する標準的なエディションになるのではと思うので、これからジョンソンの研究をしようとか、何かちょっとジョンソンの人生について参照するものが必要だという場合はとにかくこれを手にとってみるといいと思う。シェイクスピアの伝記はごっそり翻訳があるし、誰かこれを基本図書ということで日本語に翻訳するといいかも。

 最初いきなりジョンソンの墓と骨の話から始まり、そのあとスコットランド旅行の話にとんだあと生まれた時に戻って話が進むという構成にはちょっと驚いたが、別にそこまでヘンというわけではないしつかみはバッチリである。なんでもジョンソンの祖先は国境地帯で山賊のようなことをやってたらしい。

 全体的にスコットランド(及びスコットランドから来たスチュアート王家)とジョンソンの関係について大変詳しく、火薬陰謀事件とジョンソンのあやしい関わりを丁寧に追った第十章とその前後はとても興味深い。このあたりは政治史に興味がある人にもおすすめかもしれない。

 …というわけでとても充実した伝記なのだが、そこまで面白くなかったのはたぶん私がジョンソンの芝居をあまり面白いと思ってないからではという気がする。他のイギリス・ルネサンスの主な劇作家に比べると私はジョンソンがたぶん一番苦手である。

 おまけとして他のもっとちゃんとした書評を。
ガーディアン
テレグラフ
スペクテイター
ニューヨークタイムズ