デレク・ジャーマンの真似は危険~『テスラ エジソンが恐れた天才』

 『テスラ エジソンが恐れた天才』を見てきた。マイケル・アルメレイダがイーサン・ホークと組んだニコラ・テスラの伝記である。これまではこの組でシェイクスピア映画などを作っていたが、これは実在の人物が主人公である。

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 アルメレイダ本人も認めているのだが、全体的にすごくデレク・ジャーマンっぽい。あんまり直線的にテスラの人生を追う伝記ではなく、ところどころで史実ではないお遊びみたいなものが入ったり、21世紀の事物が出てきたりする。21世紀の事物が出てくるのはテスラという人物の極めて現代的なヴィジョンを示唆する上で有効だとは思うし、面白いところもいくつもあるのだが、なんというかデレク・ジャーマンみたいな独創的な監督の真似をして伝記を撮るのは危険では…という気がした。ジャーマンは超独特のセンスで歴史ものに現代の事物を入れてもちゃんとまとまるように作っていたと思っていたのだが、なんというかこの映画はたまに妙にふつうの伝記映画に寄るところがあって、そこがあんまり一貫していないように見える。イーサン・ホークとかエディソン役のカイル・マクラクランが、デレク・ジャーマンっぽい映画に出るにしてはちょっとアメリカの色男スター風味がありすぎるのかもしれない(2人ともアート映画の貴公子みたいな位置づけではあると思うのだが)。とくにイーサン・ホークは『ブルーに生まれついて』みたいなわりとストレートな伝記映画でも非常に力を発揮するタイプなので、ホークがテスラ役で出てくると芝居が王道すぎてなんとなくそぐわない感じがするところもある。