大学関係者必見!面白おかしくほろ苦い大学ロマコメ『マギーズ・プラン −幸せのあとしまつ−』

 『マギーズ・プラン −幸せのあとしまつ−』を見てきた。

 ヒロインのマギー(グレタ・ガーウィグ)はアートマネジメントの専門家で、大学でアートスクールの学生たちのキャリア支援をしている。そろそろ子どもが欲しいが恋人がいないので、知人のガイ(トラヴィス・フィメル)から精子をもらって小作りしようなどと考えているうちに、大学で同僚になったジョン(イーサン・ホーク)と深い仲になってしまう。ところがジョンにはコロンビア大学の専任でデンマーク系の超優秀な学者であるかなり年上の妻、ジョージェット(ジュリアン・ムーア)と、2人の子どもがいた。マギーは妊娠し、ジョンはジョージェットと別れてマギーと結婚、リリーが生まれる。ところが数年のうちのジョンとマギーの間の愛は冷める。ふとしたことからジョージェットがまだジョンを愛しており、思ったより良い人であることを知ったマギーは、ジョンをジョージェットを元の鞘に戻そうと画策を…

 内容だけだとえらくドロドロした話みたいだし、マギーが大馬鹿者に見えるのだが、実際はけっこう面白おかしい話だ。グレタ・ガーウィグが好演しているので、ヒロインのマギーはいろいろバカなところはあるものの、基本的にはあまり悪意がなく、とても人間味のある女性として描かれている。最後のオチの付け方はちょっと予想できたが、笑わせたりホロリとさせたりする展開はとても面白い。いつのまにかマギーとジョージェットが仲良くなってしまうあたりの会話の描き方なんかも、ちょっとしたさじ加減でかなり不愉快になりそうなところ、さらっと仕上げている。ベクデル・テストはもちろんパスする。

 また、この映画は大学内幕ものとしてすごく面白い。主要な登場人物3名が大学教員なので、いろいろ大学ネタが出てくる。マギーが家事やらなんやらのせいで学生指導に行けなくなっちゃったり、ジョンがやたら小説を書きたがっていたりするあたりは日本の大学でもよく見かけると思うし、職場不倫やらマギーがジョンを学会で誘惑する展開やらも、まあしょっちゅうあるというわけではないだろうが描き方がとても上手なのでいかにも学者間でありそうな展開だという印象を受けた。一番ヤバいのがジョンの来歴で、優秀でイケメンでジジェクが大好きなポストモダン系の人類学者(Ficto-critical anthropologyだって)という、「私が考えるアカデミアの地雷な彼氏」そのまんまみたいな人である。ここまで地雷なアカデミア彼氏はまずいないだろうと思うのだが、こんなヤバ彼氏のイデアイーサン・ホークの姿をまとって現れるので、ジュリアン・ムーアグレタ・ガーウィグもすっかり地雷の被害に…