アルメイダ座、ジョナサン・プライス主演『リア王』〜家庭悲劇としてのリア王

 アルメイダ座ジョナサン・プライス主演、マイケル・アッテンボロー演出の『リア王』を見てきた。

 とりあえずほとんど売り切れちゃってたせいですごい端っこの席しかとれなかったため、舞台の40%くらいが隠れるという最悪な環境だったのだが、それでもジョナサン・プライスの演技は時にコミカル、時に痛切、時に暴力的で複雑な老父リアの性格をよく表しており、大変良いと思った。批評でも言われているがかなり家庭悲劇っぽく、リアは国王というよりは偏屈でやや虐待的傾向のある父親であり、演出の端々で上の娘2人がリアを憎んでいるのには何か理由があるらしい、どうもリアはずっとコーデリアだけを贔屓していてゴネリルとリーガンを可愛がっていなかったのではないか、ということが暗示されるためスリリングだ。リアにひどいことを言われて泣き崩れるゴネリルとか、女優陣も好演していて家族間の憎悪がよく出ている。

 あと面白いのはエドガーが最初、女の子といちゃつきながら出てくるところである。エドガーというと真面目な苦労人みたいに演出することが多いと思うが、このプロダクションのエドガーは最初、父のグロスターに似てかわいい女の子に目がない何も考えてなさそうな人のいいにーちゃんなのだが、それがすさまじい苦労を経て最後復讐を果たす。エドガー役のリチャード・ゴールディングはモテ男から泥まみれになって暴れ回る陽狂の放浪者までいろんな表現を巧みにやっていて、この成長の過程になかなか説得力がある。シェイクスピアの作品って、悪辣な企みをする男ほど性的には折り目正しかったり、セックスそのものに興味が無くて権力闘争の手段としか考えてなかったりするので(前者はマクベス、後者はリチャード三世やこの作品のエドマンド)、「女好きの陽気なにーちゃん→実はいい人」というこの演出はシェイクスピア作品としてはかなり適切だと思う。


 ただ、デレク・ジャコビバージョンには負けるかなぁ…あれはすごかったからなぁ…