最後の演出がすごい〜『ウィルを待ちながら〜歯もなく目もなく何もなし〜』(ネタバレあり)

 Kawai Projectによる新作『ウィルを待ちながら〜歯もなく目もなく何もなし』をこまばアゴラ劇場で見てきた。
 ウィリアム・シェイクスピアがスランプに陥って『歯もなく目もなく何もなし』という芝居を書いていたところ、リチャード・バーベッジがせかしに来る…が、いつのまにか劇中劇のような形で俳優のタカ(高山春夫)とハル(田代隆秀)が作者ウィルを待つ話が始まり…という展開である。シェイクスピアの名台詞がたくさん入っているが、雰囲気は『ゴドーを待ちながら』に近い。
 たぶんこういうコンセプトでシェイクスピアの台詞をたくさん詰め込んだ芝居はけっこうあり、私もバンクサイドのローズ座でShakespeare's Womenを見たことがある(これは死ぬ間際のシェイクスピア)を看取る家族の女性たちがシェイクスピア劇の女性キャラクターに次々と変わるみたいな芝居)。ただ、この作品はいろいろなシェイクスピア作品に出てきたベテラン俳優2人がかなり本人に近いようなキャラクターを演じるので、非常に楽屋落ちなジョークとかもたくさん入っている。
 ただ、正直私は個人的にちょっと無理だった…というのも、完全に私的な趣味の問題なのだが、タカとハルがかなり地雷カップリングだったからである(私はそんなに地雷がないほうだと思っていたのだが、珍しい…)。全体的にタカとハルがきゃっきゃするおじさまBLみたいな話なのだが、タカがすごくシェイクスピアに詳しくて、シェイクスピアは好きだけどそこまで詳しくないハルを振り回す…みたいなのはシェイクスピアリアン腐女子的にキツかった。このため、芝居の内容以前にちょっと受け付けられないところがあった。
 ただ、最後の本棚のセットが全部崩れ落ちてくる演出は大変良かった。以前見たRSCの『冬物語』を想い出したが、私が見た時はセット崩壊が失敗したので、それより壮観だった。