前田愛『近代読者の成立』〜日本近代メディア受容史に関する基本書

 前田愛『近代読者の成立』を読んだ。1973年だかに出て何度か再版されているらしいのだが、私が読んだ2001年の岩波現代文庫版ももう品切れらしい。良い本なのに残念である。

 内容は天保期から戦後くらいまでかなり長いスパンで、出版、作者の考え方、読者の投稿などなどいろいろな角度から日本の文芸と読者の関わりを探る、というもので、江戸の文芸などをよく知らない者には非常に新鮮な情報が多い一方、メディアや受容の歴史研究としてはどの分野にも応用できそうなところが多くて非常に興味深かった。