ジョルジュ・サンドと女性サン・シモン主義者の男装〜『社会表象としての服飾―近代フランスにおける異性装の研究』

 新實五穂『社会表象としての服飾―近代フランスにおける異性装の研究』(東信堂、2010)を読んだ。

 前半はジョルジュ・サンドの男装、後半はサン・シモン主義に共鳴した女性たちの男っぽい服装を当時のフランス社会の政情や文化にあわせて分析するというもので、フランス史をよく知らない者には若干とっつきにくいところもあったものの、男装を女性がどのように自由のために政治的に利用したかについての面白い分析がいろいろ入っている。とくに女性も男性もサン・シモン主義者は着るもので自分の政治観を示していたというのは興味深く、イギリスでも17-18世紀にかけてファッションと政治は切っても切れない関係にあったし、自分の政治的価値観にあわせた服装でデモとかに行くというのはオキュパイ運動なんかでも見かけたことで今現在の政治を考える上でも大事だと思うので、こういう服飾の政治史みたいなのがもっとどんどん流行って一般向けに読めるものが出ればいいなと思う。