楽しい喜劇だが、ドタバタに走りすぎな気も〜Dステ『十二夜』

 Dステのオールメール十二夜』を見てきた。笑いが多くて楽しく見られる喜劇だが、ちょっとドタバタに走りすぎでうまくいってないところもある気がした。

 とりあえず、この間見たアイドル舞台の『ハムレット』が結構ひどかったので、女性に人気のある若いイケメン男優のオールメールシェイクスピア…ということでちょっと心配していたのだが、演技や笑いのほうでは全然すごくちゃんとしていて、女役の人たちも大変頑張っており、とくに最後のヴァイオラとセバスチャンの再会場面とかは着るものや化粧でかなり二人を似せてキレイにまとめており、心配して損した…と思った。

 全体的なコンセプトとしては能舞台みたいな建物を舞台中央に設置して紀伊國屋神社にお芝居を奉納するという形式になっており、設定自体は祝祭喜劇的な側面があるこのお芝居によく似合っていると思う。ただ、枠は和風な神社への奉納だが服装は洋装で、このへんはインターカルチュラルととらえればいいのか蜷川版に似すぎないように和装を避けたとみるべきか、いろいろ考えてしまった。とはいえ見ているうちにだんだん違和感はなくなってくる。

 とにかく笑いが多い舞台で、しかも道化のフェステとかより主役の恋人たち、とくにオリヴィアがめちゃくちゃコミカルで強烈なのでそこはとても良い。台本を二時間ちょっきりにカットしているが、最後のサー・トウビーがサー・アンドルーを追い出す場面をカットしているあたり、あきらかに楽しい笑いを意識したカットの仕方だと思うので、全体的に優美な恋愛ものというよりはファルスっぽいドタバタ劇を志向したようである。ロマンティックさに欠けるところはちょっと不満もあるが、まあドタバタ芝居にするっていう方向も悪くはない。

 ただ、オリヴィアとかマライアがものすごく強烈に可笑しいおかげでマルヴォーリオいじめの脇筋がかなり弱いというか「これなら本筋のほうが笑えない?」みたいな感じで、あまり諷刺でもドタバタでもなくただのいじめ話みたいになっていたのがあまりよくなかったと思う。ミッキー・カーチス演じるサー・トウビーの存在感とかはすごいのだが…

 ひとつ興味深いなと思ったのは、アントニオが明らかにゲイでセバスチャンがそれに気づいてちょっとアントニオをウザがりつつも友情で離れない…という演出があったところ。なんというかアントニオはすごくいいヤツ風でセバスチャンもだから信頼している、という感じは伝わってくるのだが、ちょっとアントニオの慕情表現が大げさでそれをセバスチャンが迷惑がっている感じが強く、少しステレオタイプ的かなぁ…とは思った。ドタバタ喜劇としてはこれでもいいのかもしれないが、この芝居には最後、アントニオがセバスチャンをオリヴィアにとられて悲しいなぁ…という隠れ失恋ストーリーラインもあると思うので、最後もうちょっとアントニオのほうにも気を配った演出をしてほしかった気がした。

関連:すでに charis先生がレビューを。全然気づかなかったが同じ上演にいた模様。