個人的な好みで話が苦手〜ハロルド・ピンター『背信』

 東京芸術劇場で葛河思潮社第四回公演『背信』を見てきた。ハロルド・ピンターの芝居を生で見るのは初めて。

 登場人物は四人だけ(うち一人は一場面しか出てこない)。エマ(松雪泰子)はロバート(田中哲司)と結婚しているが、ロバートの親友ジェリー(長塚圭史)と長年にわたり不倫を続けていた。不倫が終わってからしばらくして、エマはロバートと別れる。これだけの話を時間を逆行させて描くというものである。

 とにかくいろんなものがはぎ取られたシンプルな芝居で、台詞も最小限である。マグリットふうの青空が窓からのぞくセットは簡素で芝居の雰囲気によく似合っているし、役者の演技も良い。のだが、私は全然面白くなかった。これは公演の質じゃなく純粋に私の好みによるものだろうと思う。なんといっても私は金に困ってないミドルクラスの夫婦の愛憎なんたらとかに全く興味がないし(『人形の家』みたいに金とか自由とか絡んでくるとまた別)、スケール感のないシンプルな芝居もあまり好きじゃないし、さらに真面目で笑いのない芝居がかなり嫌いなほうである。この芝居はひたすら中年男女の泥沼なんたらを真面目に描いており、笑える場面は四人目の登場人物であるウェイターが出てくるところだけなので、なんかもうこんなスケールの小さい真面目な芝居結構ですわっていう気になってしまった。不倫を逆順で描くっていうのも、70年代に発表された時は新しかったんだろうが。第二場は第一場より時系列的に後だったり、厳密に言うと完全な逆順ではないので、『(500)日のサマー』とか見てるとそんなに斬新さがわからないっていうのもあった。まあ、こういうのが面白いという人がいるのはわかるが、私向きのお茶ではない。30過ぎて初めて見た芝居でこの内容でダメっ