空っぽの劇場を背景に~『真面目が肝心』(配信)

 ストリームシアターでオスカー・ワイルド真面目が肝心』を見た。これはニューカッスル大学演劇部がアダム・キニーン演出によってサンダーランド・エンパイア劇場で上演したもので、新型コロナウイルス感染症の流行のせいで窮地に陥っている舞台芸術関係者のためのチャリティ公演として有料配信されているものである。サンダーランド・エンパイアはかなり大きい劇場で2000人くらいのキャパシティなのだが、空席を背景に撮影している。

 学生演劇ということもあり、演技はまあふつうのクオリティである。後半は良くなるのだが、序盤はちょっと間などが不自然なところも見受けられる。ただしひと工夫として、最初、中盤、最後に著者であるオスカー・ワイルドとロビ-・ロスが会話する場面がある。最初はけっこう面食らうのだが、これは才能あふれるワイルドが同性愛者として受けた弾圧と、常に忠実な友人だったロビーの心意気を示唆する内容になっている。台詞はおおむねワイルドの他の著作からとってきている。最後はロビーがオスカーに対して、芸術のために生きてくれと涙ながらに頼む。正直、ここだけで短い一本の芝居を作ってもよいのではないかと思った。