人間の小ささ~『フィレンツェの悲劇』/『ジャンニ・スキッキ』

 新国立劇場で『フィレンツェの悲劇』/『ジャンニ・スキッキ』二本立てを見てきた。フィレンツェを舞台にした1時間くらいのオペラ2本をまとめてやるものである。

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 お目当てはオスカー・ワイルドが原作の『フィレンツェの悲劇』だったのだが、こちらはそもそもあまり戯曲じたい面白いと思わなかったので、そのせいかオペラもそんなに好きになれなかった。『サロメ』に比べると緊密さが足りないし、喜劇に比べると笑えるところがないし…

 

 『ジャンニ・スキッキ』のほうは死んだ金持ちの遺産をめぐる親族たちのいがみあいの話である。人間の欲を諷刺する面白おかしいばか話で、こちらのほうがずっと楽しめた。とくにセットが巨大な引き出しになっており、てんびん(正義、公正を象徴するはず)を中心に机とか本とかお菓子などの調度品をふつうの何倍も大きくして設置しているところが視覚的に面白い。ばかでかい調度品の間を登場人物たちが歩くと、まるで民家の机にちっちゃな妖精が紛れ込んだみたいで、視覚的に見映えがする。このセットは登場人物たちの器の小ささをよく示していて、見た目が楽しいだけではなくてちゃんと意味があるのもいい。