いい本なのに、全然売る気がなさそうに見えるものを紹介する企画

 このところ洋画の宣伝方法がおかしい、ファンのほうを向いてないということで批判が多いので、ふと「本もそうかも」と思った。そこで、ちょっと思いついて「今まで見たことがある本の中で、いい本だが全く売る気がなさそうなもの」を紹介してみようと思う。基本的に質についてはかなり高く評価している本ばかりなので、バカにするための企画ではない。

岡和田晃編『北の想像力 《北海道文学》と《北海道SF》をめぐる思索の旅』寿郎社、2014。

北の想像力 《北海道文学》と《北海道SF》をめぐる思索の旅
石和 義之 礒部 剛喜 浦 高晃 岡和田 晃 忍澤 勉 倉数 茂 小谷 真理 高槻 真樹 巽 孝之 田中 里尚 丹菊 逸治 東條 慎生 橋本 輝幸 藤元 登四郎 増田 まもる 松本 寛大 三浦 祐嗣 宮野 由梨香 横道 仁志 渡邊 利道
寿郎社
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 北海道を舞台にした文学作品、とくにSFについての評論を幅広く収録した本で、たいへん興味深いアンソロジーである。ところが全部で800ページもあり、値段が8100円。いったいこんなもん誰が通読するだろうか。いい本なのに、もっと薄く読みやすくするという試みはしなかったのだろうか。(とはいえ、とりあえず図書館とかにリクエストしてみて下さい!)



ひつじ書房の研究書類

 ひつじ書房言語学を少しでも学んだ人なら教科書などでお世話になったことがあると思うのだが、教科書とかはともかく研究書類はものすごい値段で見た目は全くそっけないものが多い。今読み始めている『日本語の共感覚的比喩』はなかなかよさそうな本なのだが(専門的ではある)、言語学以外の人にも役立ちそうな本であっても他の分野の人には絶対リーチしないだろうなーと思う。



フレデリック・マルテル『超大国アメリカの文化力―仏文化外交官による全米踏査レポート』岩波書店、2009。

 
 これは売る気がないというよりは売る方句が間違った本で、なんとなく最近の洋画の宣伝方法とも共通するものを感じる…のだが、これ、こんなにタイトルがチャラいのに内容はフランス人のPhD持ち外交官が書いたアメリ文化政策に関する大規模かつ綿密な調査にもとづくルポで、650ページくらいある。そんなに難解ではなく、研究者や文化政策関係者のみならず、アーティストやこの分野に関心のある初学者でも別に読めると思う。すごくいい本なのだが、このチャラいタイトルとゴツい見た目では本来この本がリーチする層の気持ちを惹きつけないのでは…



・ヘイドン・ホワイト『メタヒストリー』作品社、未刊行
 そもそも出てない。ものすっごーく長い間出てない。ガンズ・アンド・ローゼズチャイニーズ・デモクラシーですら出たのに…以下の作品社さんツイッターをごらんあれ。