モテモテクズ男ジョニー・サンダース一代記〜『Looking for Johnny』

 シネマカリテで『Looking for Johnny』を見てきた。元ニューヨーク・ドールズジョニー・サンダースドキュメンタリー映画である。主に元のバンドメンバーや一緒に仕事をしていた連中が出演し、証言と昔の映像でジョニーの人生を語る。

 ジョニー・サンダースはミュージシャンとして多大な業績を残したが、ドラッグまみれのかなり大変な生涯を送ったそうだ。ただし、麻薬の過剰摂取でニューオーリンズのホテルで死亡したと考えられているが、死因には不審な点があり、犯罪に巻き込まれたという噂や、持病(白血病の一種を煩っていたらしい)との関連についての疑いもあるらしい。

 ジョニーはドラッグまみれであったので当然私生活はメチャクチャで、依存症が激しかった時は妻に暴力をふるい、そのせいで離婚ということになったそうだ。ジョニーは子煩悩な父親だったのでつらかったらしいのだが、これに関してドキュメンタリーに出てきている友人たちの証言は冷静だ。ジョニーは自分を無条件に愛してくれる人を必要としていたので子どもをほしがり、娘が生まれた時は「自分を捨てない女は初めてだ」と行ったとか、またまたジョニーは「子どもがいなくてつらいからドラッグがやめられない」と言っていたけど本当は逆で、ドラッグがやめられないから子どもたちがとりあげられたのであり、ジョニーは自分が悪いということを全然理解していなかった、というような証言がどんどん出てくる。まったく典型的なDVダメ男だ。

 しかしながらジョニーはこんなクズなのにモテモテであった。それはジョニーのステージ映像を見ていればわかることで、まともな耳と目を持った女がこの溢れる才能に抗うのはちょっと難しい(愛は合理的な判断をできなくさせるというのはルネサンスの時代から詩人と哲学者が頭を悩ませていることだ)。しかも、ジョニーは妻と別れた後に北欧出身のスーザンという女性と暮らしていた時はあまり暴力も振るわず落ち着いていたそうで、まあDV男というのはどの女といる時もDV野郎というわけではないらしいのだが、なぜそうなるんだろう…と不思議に思った。