私、この戯曲があまり好きじゃないかも〜『毛皮のマリー』

 新国立劇場美輪明宏演出・主演の『毛皮のマリー』を見てきた。劇作家としての寺山修司の代表作のひとつである。以前、この芝居は人形を用いたひとり芝居で見たことがあり、そのときはあまり好きになれなくて人形劇が苦手だからかな…と思ったのだが、どうも私、この戯曲じたいがあまり好きではないらしい。

 華やかな暮らしをしている男娼マリーと養子である美少年・欣也の人間関係を幻想的に描いた作品で、いろいろな点で非常に独創的な戯曲だと思うし、また耽美的になったかと思うと急にモーニング娘。が流れる派手派手な演出になったり、メリハリのきいた演出は良かったと思うのだが、全体的にミソジニーと内面化されたホモフォビアを非常に息苦しい感じで描いているところが苦手である。見ていて息がつまるし、疲れる。

 あと、私は寺山修司の戯曲はこれと、あと映像で『身毒丸』見ただけだと思うのだが(なんか唐十郎の『滝の白糸』と『身毒丸』をごっちゃにしていたので実は『身毒丸』のあらすじが若干あやしいのだが)、少なくとも『毛皮のマリー』はどっちかというと詩劇の一種で、ギリシャ悲劇に近いようなものである気がする。台詞が非常に詩的で、リアリズムのスタイルで演出してもうまくはいかない。その点で美輪明宏みたいな一般人よりオーラが何周もデカい役者がやるというのがふさわしいのだろうが、他の役にもちょっとふつうの芝居とは違う、それこそシェイクスピアギリシャ悲劇、能狂言なんんかの訓練をしたことがあるような役者をあてないと難しいのではと思った。