あぶねえホテル~Project Nyx『星の王子さま』

 東京芸術劇場Project Nyx『星の王子さま』を見てきた。物語は、サンテグジュペリの『星の王子さま』と、寺山修司の戯曲『星の王子さま』、つまり星の王子さまにとりつかれた女主人がうろついている「星のホテル」なる怪しい宿屋の物語が交錯するというものである。寺山修司のほうの戯曲は一度も見たことがなく、また未読だった。

 

 ほとんど女優だけの裏宝塚みたいなスタイルの上演で(寺山修司の原作がもともとそうやって上演する戯曲らしい)、作り込んだキッチュでちょっとゴスいセットに、やはり凝った音楽をふんだんに盛り込んでいる。さらに途中に、エアリアルシルクの若林美保、フラワー・メグドラァグクイーンのヴィヴィアン佐藤、中山ラビバーレスクパフォーマーのエロチカ・バンブーによるショーがあり、「女性性」(かなり誇張された人工的な「女らしさ」)の力や美を称えるようなシークエンスがある。全体的には笑えるところもあり、見た目も面白くて楽しめた。

 

 …のだが、なんとなく私、寺山修司が好きではないのかもしれないと思った。ものすごく才能を感じるのだが、セックスに対する嫌悪と魅了の両方が重苦しくのしかかってくる濃い描写がちょっと見てて疲れる。『毛皮のマリー』を見た時も、内面化されたホモフォビアミソジニーを克明に描写するところがけっこう見ていてきつかったのだが(作品じたいがホモフォビア的・ミソジニー的かというとそういうわけでもないのかもとも思うのだが、とにかく描写が濃すぎるのがつらい)、『星の王子さま』も、ずっと男装をして娘の父親のふりをしてきた美女が点灯夫に襲われて、最初は嫌がっているが結局自分の抑圧していた性欲が爆裂してしまうという描写がなんかちょっと見ていてキツかった。この前のところまではけっこう退廃的ながらも明るい話だったのだが、最後の最後がけっこうつらかったという印象だ。