古典的なトロッコ問題〜『アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場』(ネタバレあり)

 『アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場』をTOHOフリーパスで見てきた。監督は『ツォツィ』を撮ったギャヴィン・フッドである。

 ドローンを用いた対テロ監視作戦の映画で、前半はイギリスとアメリカの基地からナイロビのテロリストを映像で監視し、動向を探るというサスペンスである。後半はテロリスト捕獲作戦が失敗したためドローンによる攻撃でテロリストを殺害しようとしたところ、テロリストの潜伏場所の前で全く無関係な女の子がパンを売り出したため攻撃するかどうかでモメて…という、所謂トロッコ問題の展開になる。

 作りは『シン・ゴジラ』にかなり似ており、会議室での議論や誰が許可を出すかという権限の問題がスリリングに描かれている。会議室のほうでは正義感はあるが強硬すぎる女性軍人パウエル(ヘレン・ミレン)や英国政府と軍をつなぐ仕事をするベンソン中将(アラン・リックマン。遺作!)などベテランの芸達者な役者を揃えており(女性軍人同士で会話をするのでベクデル・テストはパス)、一方でケニアのフィールドエージェントとして気の毒なくらいこき使われるジャマ(『キャプテン・フィリップス』のバーカッド・アブディ)とかパンを売る少女など現地の人々を演じる役者たちも演技は上手い。後味はあまり良くないし考えさせられるところもあり、とても良くできた政治スリラーだと思う…のだが、あまり分析の切り口は思いつかなかった。こういう、普段見ないジャンルで普通によくできた映画というのは「良かったですね」以外にあまりコメントが思いつかないことがある…