最新の特殊効果で魔法を舞台に〜『ハリー・ポッターと呪いの子』二部作(ネタバレあり)

 パレス座で『ハリー・ポッターと呪いの子』二部作を見てきた。二部に分かれて上演される大作で、J・K・ローリング、ジャック・ソーン、ジョン・ティファニーが台本を書き、ティファニーは演出もつとめている。来学期クラスでこの戯曲を読むことになっているので、是非見ておかねばと思っていた(チケットが超高かった…)。

 物語はハリー、ロン、ハーマイオニの子どもたちを中心にしている。ハリーの息子アルバスと、ドラコの息子スコーピアスはホグワーツでスリザリン寮に入り、親友になる。父親とうまくいっていないアルバスはひょんなことから学校対抗戦でヴォルデモートに殺害されたセドリック・ディゴリーの父エイモスが息子を逆転時計で生き返らせたいと思っていることを知り、なんとか助けられないかと作戦を練るが…

 台本を読んでいていったいこれはどういうふうに演出するんだろうと思うところがたくさんあったのだが、とりあえずとにかく特殊効果が凄い。杖から普通に炎や光が出るし、逆転時計を使うとセット(時計をモチーフにいくつかアーチがあるという美術)の全体が歪むし(あれ、照明とプロジェクションでやってる?良くできててビックリしてしまい、仕組みをちゃんとチェックする余裕がなかった…)、人が本棚に吸い込まれる場面とか、ポリジュース薬で早変わりする場面などもたいへんうまく演出されていて不自然さが無い。第1部の最後のところではディメンターが文字通り客席の上を飛び回る(『オペラ座の怪人』のシャンデリアに似た装置なのかな?違う?)。最先端の技術を惜しげもなく使っており、たぶんものすごくお金がかかっているし、腕利きのスタッフを雇っていると思われる。

 お話は子どもたちの純粋な心に闇の魔術がつけ込んで…というもので、ちょっとアルバスはいくら純粋でしかも父とトラブっている子どもとはいえ考えが浅すぎないかと思ってしまうところもある。あと、逆転時計によって生じるタイムパラドックスの処理があまりスマートではない。逆転時計を使うとパラレルユニバースが生じるのだが、逆転時計を使った人間だけはその前に属していたユニバースの記憶を保持しているという設定で、ちょっと設定の安易さを感じる。しかしながらこのタイムパラドックスの処理が気にならなければけっこう面白く見られると思う。子どもたちの会話はうまく書かれており(子役も二人とも上手い)、とくにスコーピアスは親父のドラコと違ってユーモアたっぷりの性格で、いちいち面白いことを言って笑わせてくれる。大人たちの描き方としてはおっさんになって丸くなったドラコとハリーの関係性の変化が面白く、ドラコが「ハーマイオニにボス面されるなんてビックリだけど、さらに驚きなのはその状態で自分が面白いと思ってること」みたいな台詞を言うのは笑える。なお、私はドラリーのカップリングはナシだと思っていたのだが、このオッサン同士のドラコとハリーを見てちょっと考えが変わった。やはりオッサンはすばらしい。