前半はいいが、全体のバランスが…チーク・バイ・ジャウル『冬物語』(配信)

 チーク・バイ・ジャウル『冬物語』を見た。2017年にバービカンで上演されたもので、4/27まで見られる。

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 現代風のわりとシンプルなセットに現代の衣装を使った演出である。かなりモダナイズしており、パーディタの家族が宮廷に行こうとするところは空港という設定になっていて、ちょっと台詞もそのコンテクストに合わせて変わっていたりする。クマはプロジェクションだ。チーク・バイ・ジャウルといえば、エイドリアン・レスターがロザリンドを演じたオールメールの『お気に召すまま』が伝説的だ。これもわりと『お気に召すまま』に近い感じで、男たちがわちゃわちゃと走り回っているところから始まる。

 前半は男たちの子供っぽさを強調するような演出で、これは全体のコンセプトとしては悪くないと思う。『冬物語』は全体としていわゆる「有害な男性性」みたいなものを扱った芝居なのだが、このプロダクションでは一見良い人そうに見えるポリクシニーズ(エドワード・セイヤー)ですらわりと問題児で、あまりしっかりした責任ある大人らしくない。レオンティーズ(オーランド・ジェイムズ)はさらに子どもっぽく、感情の制御がきかないタイプの男として演じられており、嫉妬の場面では爆発的な感情を見せる。また、マミリアス(トム・コート)はどうやら相当に繊細な子どもで両親の不仲の兆しを敏感に感じ取っているらしく、途中からパニックアタックみたいなものを起こしてすごく健康状態が悪そうになる。これはマミリアスが突然亡くなる伏線としての演出だろうと思う。

 面白いのは裁判の場面で、デルフォイの神託を読むところはかなり独創的な演出が使われている。神託の前半で、ハーマイオニ(ナタリー・ラドモール=クアーク)が潔白だというところまで聞いたレオンティーズはこれを信じて安心して泣き出し、ハーマイオニがレオンティーズに駆け寄って和解か…と思いきや、神託の後半でレオンティーズが後継者なしで死ぬというところが読み上げられると、レオンティーズは急に態度を変え、自分には王子がいるのだから神託は嘘だと言い始める。ここから王子マミリアスの死の知らせとハーマイオニの失神、レオンティーズの激しい後悔までが大変スピーディで、ここはとても良かった。

 

 ただ、後半はかなり激しい感情を表現していたレオンティーズが出てこなくなり、ややのっぺりしてしまうところがある。それを補うためかざらざらした印象の演出が多く、現代風の設定のせいもあり、またわりと不機嫌そうなパーディタ(エリナー・マクローリン)と強引な感じのフロリゼルが中心になるせいで、のどかな農村にしてはちょっとぎすぎすした感じになっている。このくらいならいいのだが、終盤はちょっと全体的にやりすぎの感がある。オートリカス(ライアン・ドナルドソン)は歌も上手で面白くてとてもいいのだが、村祭りでオートリカスがリアリティショーごっこみたいなのを始めるのは不要に思えるし、空港での暴力沙汰も過剰だと思った。全体のトーンのバランスという点ではちょっとブレすぎてるように思う。