年を取ってもキラキラのクイーンたち~『ディヴァイン・ディーバ』

 『ディヴァイン・ディーバ』を見てきた。

 

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 ブラジルのリオにあるヒバル劇場を舞台に、デビュー50周年イベントをすることになったドラァグクイーンたちを撮ったドキュメンタリー映画である。監督のレアンドラ・レアルは劇場創設者の孫だということだ。

 

 ドラァグクイーンたちはもう70歳くらいでかなりおばあさん、おじいさんと言っていいような感じなのだが、みんなゴージャスでキラキラでパワフルだ。背景や芸への取り組み方もそれぞれで、いつもドレスを着ていてトランスジェンダー女性と言ったほうがよいようなディーヴァがほとんどだが、普段は男性の格好をしているマルケザのようなパフォーマーもいる。

 

 60年代にブラジルでショーを始めた時の抑圧や逮捕、差別、人間関係の問題、年をとってショーが体力的につらくなってきていることなど、シリアスな話もたくさん出てはくるのだが、全体的にはけっこう明るいトーンだ。というのも、このディーヴァたちはかなりパフォーマーとして成功した人たちで、私生活もわりあい幸せな人が多い。ホジェリアは開けたお母さんに育てられた人で、ドラァグクイーンになった時もあまり家族が驚かなかったらしいし、ジャネは愛する夫のオタヴィオと40年以上一緒に暮らしていて、老夫婦なのにまるで新婚みたいだ。カミレにはすっごく年下のハンサムな恋人がおり、最初は周りの人たちに良からぬ目的でスターに近付いてくる困った人なのではないかと疑われていたらしいのだが、このカレは実のところ、ゴージャスなカミレに本気で夢中らしい。エロイナは際どいショーのプロデュースで大成功しためざとい興行師なのだが、稼いだお金をキレイに使ってしまうのであまり貯金がないらしい。

 

 あまり過剰に盛り上げたりはしない淡々とした撮り方でディーヴァたちのキャラクターを掘り下げるもので、この手の映画にしては地味なほうかもしれないが、好感が持てる作品だった。