好みの問題だと思うのだが、どうもピンとこなかった~シアタートラム『かもめ』

 シアタートラムで無名塾の『かもめ』を見てきた。言わずと知れたチェーホフの有名作である。

 

 ヴィジュアルはけっこう良くて、板の両脇に白っぽい作りかけの木の家具みたいなものが無造作に散らばっており、社会や家族など、さまざまなものが崩壊しつつある『かもめ』の世界の状況をよく表している。さらに、比較的しっかりしているはずだが不機嫌で不幸なマーシャが四六時中かぎたばこらしいものを吸いまくっているの、まるで現代人の目には麻薬中毒みたいに見えて、視覚的に表現されたどん詰まりぶりのインパクトがすごい。

 

 しかしながら、女性陣は良かったのだが、どうも私は男性陣の演技がピンとこなかった…コースチャは実はあまりかっこよくない若者なのではと思うので、見た目があまりパッとしない感じに作っているのはいいのだが、それにしても台詞回しがもっさりしすぎているように思える(たまに聞き取りづらいところもあるくらいだった)。あと、メドヴェージェンコはちょっとわざとらしく鈍感に作りすぎているように思った。完全に個人的な好みの問題だと思うのだが、このあたりのせいで私はあまり良いとは思えなかった。