戦場を取材することの重要性を描いた映画『プライベート・ウォー』

 戦場で亡くなった実在のジャーナリスト、メリー・コルヴィンの半生を描いたマシュー・ハイネマン監督作『プライベート・ウォー』を見てきた。主演はロザムンド・パイク、製作がシャーリーズ・セロン、主題歌をアニー・レノックスが担当していて、ビッグネームの女性陣が集まり、著名な女性の業績を顕彰すべく作った映画と言える。

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 メリー(ロザムンド・パイク)はイギリスの『サンデー・タイムズ』で働くアメリカ人ジャーナリストで、戦場の取材が専門だ。兵士や政治家のみならず、避難者など戦争で人生が影響を受けているあらゆる人々を取材し、話を聞いて正確な情報を伝えることに尽力している。取材の最中に片目を失い、アイパッチをつけることになるが、それでも戦場取材をやめない。強い使命感を持って戦争を報道するメリーだが、次々と取材をするうちにPTSDを患っていることがわかる。

 

 2012年のホムスでの死を起点とし、「ホムスの何年前」というふうに、どんどんメリーが死に近付いていく様子を描いている。一方で場所の移動などはかなり自由で、ロンドンにいたと思ったらすぐ戦場に移動していたり、フラッシュバックが入ったり、わりとメリーの意識の中で何が重視されていたかに焦点を置いた編集だ。ジャーナリストとしてのメリーの高潔さと使命感や、戦場について報道すること、事実をしっかり伝えることの社会的な重要性が非常に丁寧に描かれている一方、メリーの頑なさなど欠点もきちんと表現していて(後輩のケイトとの仕事に関する会話などでベクデル・テストはパスするが、あんまり後輩をちゃんと育てるタイプではない)、人間味のある主人公になっている。ロザムンド・パイクの演技は大変素晴らしい。メリーはかなり恋多き女でカジュアルセックスなども普通にするのだが、そのへんもさらっとあまりネガティヴにならずに描かれており、彼氏役でちょっと出てくるスタンリー・トゥッチがいい味を出している。