実ははじめてではないのでは?~『イーディ、83歳 はじめての山登り』(ネタバレあり)

 『イーディ、83歳 はじめての山登り』を見てきた。

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 イーディ(シーラ・ハンコック)は全くうまくいっていない夫の介護を30年もやった後に寡婦となっていたが、娘とはうまくいかず、鬱屈した日々を送っていた。ある日、アウトドア派だった亡き父のはがきを見つけた83歳のイーディは、父と行きたいと思っていて果たせなかったスコットランドのスイルベン山に登ることを決意する。現地で登山の達人だという若者ジョニー(ケヴィン・ガスリー)に出会い、登山訓練を受けるが…

 

 「はじめての山登り」というタイトルだが、結婚前のイーディはどうもお父さんといろいろキャンプやハイキングや川下りなどをしていたらしいので、「はじめての」というのはちょっと言い過ぎかもと思った。イーディの亡夫は相当に横暴な人だったようで、イーディはそのため全くもともとの冒険好きな性格を封印して耐えて暮らしてきた。このお話はそんなイーディが自分を取り戻そうとする物語である。

 

 イーディの人生はハイランドで出会ったジョニーの人生とかなり呼応している…というか、ジョニーはあまりうまくいっているとは言えない恋人と一緒になろうとしており、かつてのイーディのように自分を抑えて生きる人生に入る瀬戸際にある。そういうわけで、最初はお互いうさんくさいと思っていたイーディとジョニーは親友になる。イーディを演じるハンコックはもちろん、このジョニーを演じるガスリーもナチュラルなスコットランド訛りになかなか味わいのある演技でいいキャラクターになっており、地味な映画だがこの2人の掛け合いを見ているだけで面白い。