役者は詐欺師の一種~『グッドライアー 偽りのゲーム』(ネタバレあり)

 『グッドライアー 偽りのゲーム』を見てきた。

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 舞台は2009年のロンドンである。詐欺師のロイ(イアン・マッケラン)は出会い系サイトで出会ったお金持ちの寡婦ベティ(ヘレン・ミレン)から財産をだまし取ろうと画策する。祖母を守ろうと警戒心を強める孫のスティーヴン(ラッセル・トーヴィ)が邪魔者だが、ロイは着々とベティの信頼を得ることに成功したかのように見えたが…

 

 詐欺を扱ったスリラーなのだが、プロットは終盤、急展開でちょっと無理があるところもある。とにかく見所はイアン・マッケランヘレン・ミレンの演技合戦だ。ロイはベティといる時は非常におとなしく温和で足の悪い老人にしか見えないし、ベティもロイといる時は保守的で人を信じやすい優しい老人にしか見えない…のだが、ひとたび詐欺師仲間の前に出るとロイは眼光鋭く年のわりには身軽に動き回る犯罪者になるし、ベティも最後に孫たちと過ごしている時はハキハキしたオシャレなおばあちゃんになる。これだけ上手な役者が2人出てきて、裏表のある人間を完璧に演じているせいで、役者というのは実は詐欺師の一種であり、詐欺の才能を大変よい方向(人を楽しませ、芸術に奉仕する)に使っているんだ、ということを痛感させるような作品になっていると思う。