いい芝居だが、見ていてつらい~アルテミジア・ジェンティレスキの人生を描くIt's True, It's True, It's True: Artemisia on Trial (配信、ネタバレあり)

 ブリーチシアターが配信している芝居It's True, It's True, It's True: Artemisia on Trialを見た。2018年の芝居で、教会で撮影したらしい。1612年のアルテミジア・ジェンティレスキのレイプ裁判の記録を舞台化したものである。

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 アルテミジア・ジェンティレスキは著名な女性画家なのだが、画家であるアゴティーノ・タッシに性暴力を受けた裁判記録が残っている。そもそもこの時代に有名な女性画家というのは珍しい上、被害者であるアルテミジアが裁判で拷問を受けるなどの悲惨な記録が残っているため、美術史では非常によくとりあげられる。若桑みどりなど、この人については日本語でも読めるものがいくつかあり、美術のフェミニズム批評では重要な研究対象である。

 基本的にはこのお芝居は裁判ものなのだが、オールフィメールでたった4人で演じるシンプルな構成である。エネルギッシュな演技でスピード感もあり、大変面白い芝居なのだが、正直アルテミジアがあまりにもひどい目にあうので見ていてつらいところが多い。 全体的にフェミニズム的な作りを意識した芝居なので、アルテミジアは単にかわいそうな被害者というわけではなく、いろいろな感情や特徴がある奥行きのある人物として描かれている。性差別的でひどい性暴力裁判を生き延びたアルテミジアがお気に入りの画題である女英雄ユディトと交信し、パティ・スミスの「グロリア」を歌うという元気の出る結末がついていてこれはとても良かったのだが、そこまで我慢して見ないとかなり憂鬱になる芝居ではあると思う。

イメージの歴史 (ちくま学芸文庫)

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女性画家列伝 (岩波新書 黄版 318)

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