ちょっとポランスキー風か?~ストラトフォード・フェスティヴァル『マクベス』(配信)

 ストラトフォード・フェスティヴァル『マクベス』を見た。2016年の上演を撮影したものである。

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 舞台は中世なのだが、衣類は光沢のある布や金属のアクセサリーをふんだんに使った豪華なもので、わりと見栄えがする。大きな玉座を置いたセットなどもよい。ただ、こういう衣装がキラキラ目立つような場面との対比でたまに舞台がかなり暗くなる場面があるのは、ライヴで見ているにはいいが、映像で見る時はちょっと見づらいと思った。

 とにかくマクベス夫妻が若くて、全体的に2人のエロティックな情愛が強調されている。マクベス(イアン・レイク)は若くてけっこうカッとなりやすい感じで、情熱的なマクベス夫人(クリスティン・ペレリン)との息がぴったりあっている。マクベスが帰還したところではマクベス夫人がマクベスの上半身を脱がせてキスしながら汚れた体をぬぐってやるという大変艶っぽい場面があり、この2人のベタベタぶりがよくあらわれている。そういうふうに若くて元気で愛し合っていた2人が殺人と王位簒奪の末にどんどん精神の健康を失って、最後にはマクベス夫人は見る影もなくやつれ、マクベスも妄執にかられるようになる。マクベス夫人が亡くなった後、ショックを受けたマクベスが涙とよだれで顔を汚しながらマクベスがトゥモロー・スピーチをするところは、一心同体だった妻を失ったマクベスの悲しみがよくあらわれている。顔が汚れても、以前と違って拭いてくれる妻はもういないのだ。

 全体的にスリリングで面白い活気のあるプロダクションなのだが、若さとエロティシズムという点ではちょっとポランスキーの映画からの影響を感じる…というか、ポランスキー版から暗くて陰気な要素を薄めたようて豪華にしたような演出だと思った。なお、やや珍しい演出としては、祝宴の場面で出てくる亡霊がバンクォーだけじゃなく、ダンカンも出てくるというものがある。マルコム王子(アントワン・ヤレド)はちょっとジャスティン・トルドーみたいな感じの、若くてすごく育ちの良さそうな政治家に作ってある。