おしゃれな静物画みたいなプロダクション~ウィーン国立歌劇場『フィガロの結婚』(配信)

 ウィーン国立歌劇場フィガロの結婚』を配信で見た。2014年11月25日に上演されたものである。ジャン=ルイ・マルティノティ演出によるものである。

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 全体的に絵画みたいなセットと衣装で、アトリエのような雰囲気で絵が掛かっていたり、これから絵に描くためみたいな様子でいろいろなものが配置されているテーブルがあったり、18世紀の静物画が動き出したみたいな上演である。とにかく着ているものがオシャレで、フィガロ(アダム・プラチェトカ)とスザンナ(アニータ・ハルティヒ)は色を揃えた服装で仲睦まじさを見せるようにしているし、またマルチェリーナはかなり色っぽく作ってあって、着ている赤と白と縞のドレスがとてもセンスがいい。ロジーナ(オルガ・ベズメルトナ)がテーブルにある砂時計をひっくり返しながら切々と薄れゆく夫の愛情を嘆いて歌うところは、歌の盛り上がりと、砂時計(夫に愛される時間が減っていくこと、時を経て薄れる愛の儚さを象徴している)の砂が落ちる様子が呼応していてとても魅力がある演出だと思った。