衣装が気になる~メトロポリタンオペラ『清教徒』(配信)

 メトロポリタンオペラでベッリーニの『清教徒』を配信で見た。2007年に上演された映像である。指揮がパトリック・サマーズ、演出がサンドロ・セキである。

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 1650年頃、イングランド内戦期のプリマスが舞台である。議会派の一家の娘であるヒロインのエルヴィーラ(アンナ・ネトレプコ)はおじのはからいで王党派のアルトゥーロ(エリック・カトラー)と結婚できることになるが、アルトゥーロには恋敵であるもともとのエルヴィーラの婚約者リッカルド(フランコ・ヴァッサッロ)がいた。しかし結婚直前にアルトゥーロは捕虜となっていた亡き王の妃エンリケッタを救出すべく逃亡してしまう。恋人が女と逃げたと知ったエルヴィーラは正気を失ってしまうが、最後にアルトゥーロが戻ってきて恩赦を受け、ハッピーエンドとなる。

 歌は皆安定しており、とくにネトレプコ演じるエルヴィーラは良かった。狂乱の場面の歌唱技術と演技は非常に迫力がある。しかしながらけっこう話と演出の細かいところが気になって、そんなに面白いとは思えなかった。一応17世紀風の豪華な舞台と衣装を使っているのだが、とりあえずヘアスタイルのチョイスには非常に疑問がある。この頃の議会派は円頂派と言われるくらいで、華やかな王党派の髪型に対抗する短く丸い質素なヘアスタイルが流行っていたはずなので(クロムウェル肖像画とかは違うが)、議会派はもっと全体的に簡素な髪型にして、王党派の色男アルトゥーロのさらさらヘアーを強調すべきだと思った。また、エルヴィーラの結婚式のヴェールが重要な小道具として出てくるのだが、17世紀半ばの清教徒の結婚式であんなに豪華なレースのヴェールを使うかな…と思った(ちゃんと調査したことがないので自信はないのだが)。全体的に議会派の衣装が豪華すぎると思う。たぶんそんなに時代考証をしっかり考えて作った台本ではないのではないかと思うので、むしろこの手の作品は思い切って現代の設定にしてしまったほうが面白いのでは…という気もした。