『オリヴァー・トゥイスト』の現代版翻案~ 『スティーラーズ』

 『スティーラーズ』を見てきた。これ、原題はTwistで、チャールズ・ディケンズの『オリヴァー・トゥイスト』の現代版である。冒頭で「歌も踊りもない」とか言っているが、これは有名なミュージカル『オリヴァー!』への言及だ。

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 舞台は現在のロンドンである。孤児でフリーランニングの達人であるストリートアーティスト、オリヴァー・トゥイスト(ラフ・ロウ)はひょんなことから若者を集めた美術品東盗難組織をやっているフェイギン(マイケル・ケイン)に拾われる。トゥイストは赤毛のレッドことナンシー(ソフィ・シムネット)に恋をするが、ナンシーは年上でどうもいろいろ後ろ暗いところあるらしいワルな女サイクス(レナ・へディ)の愛人だった。トゥイストはフェイギンが計画している。ロスバーン博士(デヴィッド・ウォリアムス)を狙った美術品盗難作戦にかかわることになるが…

 あんまり個性のない子供が主人公の原作に比べると本作は完全に別物で、現代風なケイパー映画になっている。ただ、とくに出来がいいというわけではなく、全体的にけっこう安っぽいし、またちょっとロンドンにしては地理的な位置関係がおかしいのでは…というようなところもある。アートフル・ドジャーがドッジ(リタ・オラ)という女性になっているところや、サイクスとナンシーが虐待的なレズビアン関係になっており、レナ・へディがひたすら暴力を振るい続ける女を演じているあたりは新しいと言えるかもしれない(ちなみに最近セクハラの訴えで大変なことになっているノエル・クラークも出ている)。フェイギンがユダヤ系だという今からすると人種差別的な設定はなくなり、いろいろおかしいとは言え原作よりははるかにマシな感じの人物になっている。しかしながらなんでフェイギンとサイクスがあんなに密な関係なのかがわからないし、フェイギンがどう見てもナンシーを虐待していると思われるサイクスを容認しているのもちょっと筋が通らない。フリーランニングはけっこう見ていて面白いのだが、それ以上の見所はない映画かなと思った。