世界シェイクスピア大会の配信で鄧樹榮演出の『マクベス』を見た。2019年の香港のプロダクションである。広東語で英語字幕がつく(最後のQ&Aは字幕がないので見られなかった)。
箱のような背景幕だけがあるシンプルなセットで展開する物語である。一応、現代の夫婦のドリームヴィジョンという枠があるのだが、正直なところ、これはなくてもよいと思った。舞台は古代中国のような感じで衣装はたまに中国風になることもあるのだが、マイクとか現代的な道具も使っている。幻影の演出にわりと特徴があり、黒子(香港だからそう呼ばないのかもしれないが)が出てきてマクベス(梵谷)に幻の剣を見せる一方、祝宴の場面はものすごくシンプルな設定なのにバンクォーの亡霊が実際に出てこなくて、ここの演出はけっこうわかりづらい(出したほうがいいのではと思う)。途中からマクベス夫人(黎玉清)とマクベスを演じる役者が入れ替わるところはマクベス夫妻が一体であることを示唆していてとても良い工夫だと思った。
ただ、全体的にかなり撮影がよろしくない。舞台の正面に据えた固定のカメラで撮っているのだが、なんか最初のほうは固定がおかしいのかちょっと画面が揺れている。上演が始まるとちゃんと固定になるのだが、いかにもアーカイヴ用の撮影という感じで、奥で役者が動いている時などはほとんど表情がわからないし、暗めの場面では動きもあんまりよくわからない。面白いプロダクションだと思うのだが、たぶん撮影のせいでだいぶわかりづらくなっていると思う。