ハムレットを出す必要あるのか…?『オフィーリア』(配信)

 世界シェイクスピア大会の配信で『オフィーリア』を見た。シンガポールで2016年に行われた上演で、ナタリー・ヘネディゲとミシェル・タン作、演出もヘネディゲがつとめている。『ハムレット』の翻案である。

 プールみたいなセットにプール監視員用の椅子があり、そこにオフィーリア(ジョー・クカサス)が座っているところから始まる。一応お芝居のリハーサルという枠があり、ハムレット(トマス・パン)がいろいろオフィーリアに面倒な指示を出し、オフィーリアがうんざりする…というような展開になっていく。けっこう直接的に暴力を振るう描写があったりもする一方、プール用のモップをハムレットの父の亡霊に見立てるなど、笑えるところもたくさんある。

 しかしながら私はあまり面白いと思わなかった…というのも、こういうお芝居にしては尺が長すぎるし、そもそも『オフィーリア』というタイトルで『ハムレット』の翻案をやるのであればハムレットなんてちょっとしか(あるいは全く)出さなくてもいいのではないかと思うからである。フェミニスト的な再解釈をするのであれば、別にハムレットを出してオフィーリアとハムレットの虐待的な関係を見せる必要はないと思う(既に原作でそれは示されていると思うし)。オフィーリアが主人公の翻案はたくさんあるが、オフィーリアが主役であるならオフィーリアが自分で動き回る芝居を見たいと思う。