ムーミンの後ろの嵐の青春~『TOVE トーベ』(ネタバレ)

 『TOVE トーベ』を見た。『ムーミン』シリーズの著者であるトーベ・ヤンソンの伝記映画である。

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 1940年代、第二次世界大戦末期くらいからのトーベ・ヤンソン(アルマ・ポウスティ)の恋と創作の物語である。やはり芸術家である父ヴィクトル(ロベルト・エンケル)からイラストっぽい作風があんまり認めてもらえないトーベは、戦争でボロボロになった部屋を借りて一人暮らしを始める。バイセクシュアルのトーベの恋愛にはさまざまな問題が起こるが、そうしたことを乗り越えてトーベが世界的に有名なアーティストになるまでを描いている。

 この作品の良いところは、トーベが男性とも女性とも恋をしている様子を特別扱いせずにさらっと描いていることだ。トーベのボーイフレンドであるアトス(シャンティ・ローニー)は既婚者、ガールフレンドのヴィヴィカ(クリスタ・コソネン)も既婚者なのだが、トーベはこの二人とけっこう並行して付き合っている(このあたりはちょっとタイムスパンをいじっている可能性もあるが、少なくとも映画の中ではそう描かれている)。トーベはアトスとは結婚しそうになり、恋多き女ヴィヴィカとは複雑な関係のせいで苦しむことになっており、端から見ていると嵐のような激しい青春なのだが、この映画はそのあたりを必要以上にドラマティックにせず、そういうこともあるよねーといった感じでさらっと物語っている。終盤のパリでのヴィヴィカとの会話はトーベの自立とある意味では青春の終わりを示すもので、ここで映画がきれいに終わっているのもいいと思った。