かなりの意欲作~『フリーダ・カーロー折れた支柱』(配信)

 『フリーダ・カーロー折れた支柱』を配信で観た。上田一豪作・演出で、メキシコの著名な画家フリーダ・カーロの伝記ものミュージカルである。2019年初演で、今回は再演である。

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 フリーダ(彩吹真央)の波乱の人生を描いたもので、全体的に死と生、動と静が、静かな場面とダンスや動きをたくさん使った場面を交互に出すことでかなりはっきり対比されている。フリーダがベッドで動けずにいる場面から始まるのだが、フリーダが創作や恋で活動的に動き回る様子と、事故や病気のせいで動けずに苦しんでいる様子の両方を見せることでメリハリをつけながらフリーダの人生の物語が展開される。フリーダは障害を抱えて相当に苦しんでおり、苦痛のせいで気難しい振る舞いなどもしてしまうことがあるのだが、一方で身体の調子がよい時のフリーダは大変魅力的でカリスマ性と才能に満ちた芸術家であり、活動的だ。こういうフリーダをあまり美化せず、比較的バランスのとれた視点で障害を描きながら人間味に満ちた形で描き出していく。

 全体的にはかなりの意欲作だと言えると思う。彩吹真央も熱演で、脇を固める役者陣も良い。あまり直線的でない語りで、「もうひとりのフリーダ」みたいなモチーフはちょっと中途半端な気はしたのだが(もっと前面に出すか、一切やらないほうがいいのではという気がした)、充分面白い。。