そもそも設定がちょっと…『1秒先の彼』(試写、ネタバレあり)

 『1秒先の彼』を試写で見た。2020年の台湾映画『1秒先の彼女』の日本版リメイクである。

www.youtube.com

 一(岡田将生)は京都市内の郵便局で働いているが、人よりなんでもワンテンポ速いタイプで、なかなか私生活がうまくいかない。そんな一だが、ストリートミュージシャンの桜子(福室莉音)に出会い、うまくいきそうでワクワクしている。ところが桜子とデートをするはずだった1日がなぜかなくなっていることに気付く。その消えた1日の手がかりを握っているのは、どうも郵便局にいつも来ている麗華(清原果耶)らしいのだが…

 話は『1秒先の彼女』とだいたい同じなのだが、舞台が京都になっているのと、また主役のジェンダーが入れ替わり、片方の主人公の仕事も変わっている。台湾の原作映画は郵便局で働いているヒロインのシャオチーとそれに恋しているバス運転手の男性グアタイの話だが、本作は郵便局で働いている男性とそれに恋している写真店でバイトしている女性の話になっている。この変更の理由はまあわかる…というか、もとの映画は周りの人が全員静止しているのをいいことに、ずっと恋していた男性がヒロインを運んでいろんなところで写真を撮るという話で、なんかちょっとストーカーじみていて気持ち悪い。もとの映画はとんでもない勘違い男の映画に見えなくもないので、たぶん男女を入れ換えたほうがちょっとはマシに見えるだろうと思ってそうしたのでは…と思う。

 ただ、正直なところ、男女を入れ換えても、やっぱり止まっている人をいろんなところに運んで…というのはやや気持ち悪い。この作品では、原作のグアタイにあたる人物がバス運転手ではなくなっているので、新たにバスの運転手として登場した釈迦牟尼仏(ミクルベと読む。荒川良々)が妙な存在感で若い2人を見張っていたり、一がかなり問題ある性格…というかむしろ原作のヒロインよりちょっとイヤな奴なのでそういう奴が仕返し的に連れ回されたりする側面もあったりして、ちょっと原作よりトーンがやわらげてあるのだが、それでも麗華がなんかストーカーチックなのは変わりない。さらに一がえらくずうずうしいちょっとイヤな奴になっているせいで、なんでこんな男に麗華が惚れ続けているのかもイマイチわからなくなっている気がする。