ちょっと音楽的には緩めなような…『シュヴァリエ』(配信)

 『シュヴァリエ』を配信で見た。18世紀のグアドループ系フランス人の実在の音楽家で、黒人男性としてはおそらく初めて有名になったジョゼフ・ブローニュ・シュヴァリエ・ド・サン=ジョルジュの伝記ものである。

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 白人の農園主と奴隷である黒人女性の間に間に生まれたジョゼフ(ケルヴィン・ハリソン・ジュニア)は音楽やフェンシングの才能で頭角を現し、マリー・アントワネット(ルーシー・ボイントン)からシュヴァリエの称号を賜る。人種のせいでひどい偏見を受けるジョゼフだが、パリのオペラ座の作曲家になるべく邁進する…ものの、パフォーマーたちに拒絶されてかなわない。そんなパリにもだんだんとフランス革命の兆しが見えてくる。

 えぐい人種差別や弾圧の描写もあり、終盤はジョゼフがどんどん不運に見舞われていくのだが、その中でもジョゼフが差別と闘うカッコいいヒーローとして描かれており、わりとエンタテイメントらしい作りで楽しめる。主演のハリソン、恋人マリ=ジョゼフィーヌ役のサマラ・ウィーヴィング、憎まれ役マリ=マドレーヌを演じるミニー・ドライヴァーなど、役者陣はけっこういい。ただ、最初のモーツァルトとの対決のところであんまりジョゼフの演奏する即興音楽が18世紀っぽくない…というか、かなり新しい感じでロマン派っぽく、ちょっと音楽的には緩いところがあるように思った。モーツァルトとの対決はたぶん史実にのっとっていないのだろうとも思うし、ここまでやらなくてもいいのでは…という気はした。