インセルを諷刺した鋭いコメディ~The Last Incel

 スモックアリー劇場でThe Last Incelを見てきた。ジェイミー・サイクス作・演出による芝居である。登場人物は5人のみ、60分の小規模なプロダクションである。

 4人のインセルがZoomでチャットをしているという設定の話で、全員四角い枠を持っており、これがPCの画面という設定である。途中でこの枠を持ってみんなで踊ったりするところもあり、ミュージカルみたいになるところもある。4人はインセルということで日々女性に対する敵意を語り合っていたが、メンバーのひとりであるアインシュタイン(Niall Johnson)の誕生日の前日、たまたま別のメンバーであるCuckboy (Fiachra Corkery) が女性とセックスしていたことがわかり、さらにはまだその女性マーカレット (Justie Stafford) が部屋にいてチャットに入ってきた…というところから始まるコメディである。

 マーガレットがチャットを見つけた時、インセルたちがアルコール依存症のサポートグループのふりをするところがとにかくおかしい。本人たちもインセルなのが女性にバレるとまずいとは思っているんだな…ということが感じられて笑ってしまう。マーガレットはジャーナリストで、これがアルコール依存症のミーティングではないことを見破っていろいろ取材のようなことをするのだが、その間にだんだんインセルメンバーたちの不安やトラウマが暴かれて、インセルコミュニティの矛盾したロジックも示されていくという展開である。鋭い諷刺でインセルカルチャーを批判しているが、薄っぺらくインセルを笑うみたいな話でもなく、スピーディでけっこう面白かった。