内容は良かったが、撮り方が…『ハニーボーイ』

 『ハニーボーイ』を見てきた。シャイア・ラブーフ脚本による自伝的な作品である。ラブーフはドラッグのリハビリのプロセスの一環としてこの台本を書いたらしい。

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 主人公オーティス(大人になってからはルーカス・ヘッジズ、子供時代はノア・ジュプ)は映画スターだが、アルコール依存症で交通事故を起こし、リハビリ施設に入院することになる。オーティスはPTSDと診断されるが、これは子供時代の体験に関連してた。オーティスは少年時代、子役として活躍していたが、虐待的な父親ジェームズ(シャイア・ラブーフ)との関係に苦しんでいた。

 明らかにもともと子役で、事故を起こして裁判所命令で入院していたラブーフの人生に基づいていると思われる作品である。ところどころ細かい描写がやたらリアルな箇所があり、主演の3人の大変しっかりした演技もあいまって、全体的には非常に迫力のある作品になっている。ただ、たまに書き込みが甘いように見えるところもあり、子供時代のオーティスとそのビッグブラザーオーウェルの『1984』ではなく、アメリカで非行リスクのありそうな家庭の子供にメンターを派遣する組織から派遣される大人)であるトムの関係の描き方についてはちょっと途中から後ろに退いてしまってあまりバランスがよくない印象を受けるし、シャイガール(FKAツイッグス )は出てきてオーティスを助けてくれるだけの何が何だかわからない女性キャラになってしまっている。このへんは脚本第一作なのと、自伝的すぎるということもあって詰めが甘いのだろうと思った。

 ただ、ちょっとどうかと思うのは撮り方だ。全編にわたって手持ちカメラが使用されており、そこは固定でよかろうというところまでカメラがブレる。森の中でオーティスが叫ぶところとかはけっこう禁欲的に止めて撮ったほうがいいと思うのだが、そこでも微妙にカメラを動かしている。これは手ブレ酔いがひどい私にはかなりつらく、正直、映像として効果的だともあまり思えなかった。