仮想現実を舞台でやる~『THE NETHER』(ネタバレあり)

 東京グローブ座で『THE NETHER』を見てきた。2013年初演のアメリカの芝居で、ジェニファー・ヘイリー作である。小児性愛とオンラインの仮想現実空間を扱った、非常に重い作品だ。

 オンライン空間The Netherでの犯罪を調査しているモリス捜査官(北山宏光)は、ヴィクトリア朝風の空間で児童売春を行っているハイダウェイの管理者シムズ(平田満)や、ハイダウェイに出入りしていたドイル(中村梅雀)を調査している。一方、ハイダウェイにはウッドナット(シライケイタ)という名前のおとり捜査員を送り込むが…

 そもそもウェブ上での小児性愛を裁けるのかという問題がある一方、最後にかなりの巧妙で驚きのある展開があり、ウェブ上の仮想空間と現実はつながっているということが示される。一方でものすごく居心地悪いのは、ウェブ上でハイダウェイにいる少女アイリス(長谷川凜音)を実際の子役が演じているということだ。これがアニメとかならまだ人じゃないと思えるし、そんなにひどく露骨な表現はないのだが、たとえ全部わかっている子役が演じているとしても、実際に子供が出てきて売春とか暴力を思わせる場面を演じるのを見るのはけっこう精神的にくるものがある。ハイダウェイで子役が出てくる場面は、おそらくわざとちょっと大げさでハイダウェイ外と違う感じに演出していると思われるのだが、生身の人が出てくる舞台でやると、本当に「後ろにいるのは大人だけど子供だ」ということが身にしみて感じられる。さらに、これについては最後にとても上手なオチがつく。

 なお、これは初演時は女優がモリスを演じたらしいのだが、ジャニーズ事務所の役者で上演する東京グローブ座の公演なので、モリス役が男性である。このせいで、おそらくお客さんは終盤の展開について、見ていて余計倫理的に悩んでしまうというか、ちょっとびっくりするところがあるのではないかと思った。