前の公演に比べると良くない~言葉のアリア『ペリクリーズ』

 言葉のアリア『ペリクリーズ』を見てきた。佐々木雄太郎脚色・演出によるもので、1時間40分にコンパクトにまとめた上演である。前のプロダクションではメインに近い役柄の性別自体を変更していたが、このプロダクションでは役じたいの性別は変えていないもののペリクリーズ役を女優(青海アキ)が演じている。

 ただ、正直なところ、前の数回の公演に比べるとだいぶ面白みに欠けると思う。そもそもこの芝居はいろいろ台本に不明点があって何か抜けている可能性もあり、最初のほう(シェイクスピアではなく共作者のジョージ・ウィルキンズが書いたのではとも言われている)はダイジェストみたいな感じもするのでやりにくいのだが、そのあたりがわりと平板な感じなのはまあ仕方ないかもしれない。しかしながら途中でマリーナ(沖田桃果)が誘拐されて売春宿に売られるあたりは妙にコミカルになっていて、深刻な性暴力を扱うタッチとしてはちょっとどうかと思うくらい軽薄だ。また、細かいところだが、妊産婦や乳母がすごいハイヒールを履いているのも衣装のバランスとしてあまり良くないと思った。マリーナの台詞が叫びすぎではと思えるところや、そこで面白可笑しくする必要はあるかな…というところも少しあった。戯曲があまり扱いやすくないからだろうが、前の『から騒ぎ』などに比べるとだいぶ精彩に欠ける上演だったと思う。