ブイヤベースが美味しそうなパラレル歴史もの~『美食家ダリのレストラン』(試写)

 『美食家ダリのレストラン』を試写で見た。

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 舞台は1974年のスペインである。フェルナンド(イバン・マサゲ)とアルベルト(ポル・ロペス)の兄弟はフランコ政権下の抑圧的なバルセロナにいられなくなり、海辺のリゾートであるカダケスにたどり着く。カダケスには有名な画家のダリがおり、ダリの大ファンであるジュールズ(ジョゼ・ガルシア)がやっている店「シュルレアル」があった。ジュールズはダリに来てもらいたい一心でいろいろな手立てを講じるが、なかなかダリは来てくれない。

 シュルレアルはフェルナンドとアルベルトが来てからエスプーマを使った凝った料理を出すようになるのだが、これはフェラン・アドリアのエル・ブリを模している…というか、フェラン・アドリアみたいな料理人がダリと同じ時代にいたら?というようなパラレル歴史をベースにした作品である。ブイヤベースをはじめとしてとにかく美味しそうな料理がたくさん出てくるし、言われてみればフェラン・アドリアの奇抜とも言える発想はダリの絵画はなんとなく共通性が感じられるな…という気はしてくる。一方でエスプーマを作る技術というのはたぶん始まったのは1990年代くらいからだと思うので、そういうものが1970年代に出てくるというのは、料理も科学だということを考えるとなんだかあり得ない科学の発展を描いているみたいな感じで、そこはなんとなく引っかかるな…と思ってしまった。