ジェイ・ローチ監督『ローズ家~崖っぷちの夫婦~』を試写で見た。
建築家のテオ(ベネディクト・カンバーバッチ)とシェフのアイヴィ(オリヴィア・コールマン)は出会ってすぐに意気投合し、アメリカに移住して結婚する。カリフォルニアに引っ越し、2人の子どもも生まれて幸せな家庭を築くが、テオが作った新しい博物館の建物が悪天候で大変な壊れ方をし、その時の動画がネットに流れてテオは失業してしまう。一方、アイヴィは近所で新しく開いた小さなレストランが大当たりし、一躍人気シェフとなる。2人の間は少しずつぎくしゃくし始めるが…
『ローズ家の戦争』のリメイク版である。SNSなど新しい要素を取り入れているのだが、一番面白いのは主役のカップルがイギリス人同士だということで、そこが前作との一番大きな違いになっている。全体的にベネディクトとオリヴィアのいかにもイギリス人っぽい掛け合いを見るのが面白いという映画になっており、これを見るだけでもお金を払う価値がある。主夫になっていきなりスポーツ英才教育に目覚めるテオも、スターシェフになって大活躍するアイヴィも、どっちももともとけっこうな変人で、その変人ぶりに年をとるとともに磨きがかかってそのせいでなかなかうまくいかなくなり…というような展開がおかしい。ただ、この2人の息がピッタリあいすぎていてあんまり本気で別れようとしてると思えない上、まあイギリス人の夫婦だからこのくらいはイヤミを言い合ってデフォルトだろう…みたいなところもあり、最後にあんなにケンカがエスカレートするのがちょっとシュールすぎるというところはあるかなと思った。イギリス人がアメリカに引っ越したせいで起こるカルチャーギャップネタもけっこうたくさんあり、最後で効いてくる一方、ケイト・マッキノンの役なんかはあんまり効いておらず、アメリカ式のギャグを持ち込んだせいでちょっと浮いているように思えた。これなら監督もイギリス人にしてがっつりアメリカに住むイギリス人風のカルチャーギャップコメディ風にしたほうが面白かったのでは…と思わなくもない。