気の利いた映像やインタラクティヴパネルがおもしろい!リヴァプール博物館

 さて、リヴァプール博物館にも行ってきた。

 この犬とも羊ともバナナともつかない彫刻はスーパーラムバナナちゃんという名前で、リヴァプールのマスコット的な彫刻らしい。デザインしたのは日本出身の太郎千恵藏さんという方。小さいモデルがリヴァプール中にあり、でっかい本体は市内のいろいろなところに場所を変えながら設置されているとか。



 港湾都市リヴァプールの光と影についての展示。


 リヴァプールにはチャイニーズの移民がたくさんいるのだが、1940年代くらいに中国系の海運労働者を排除する動きがあったらしい。チャイニーズの労働者たちはリヴァプールで地元の女性(必ずしも同じチャイニーズばかりではなく、いろいろな民族の女性がいたようだ)と一緒になって家庭を持っていたことも多かったのだが、いきなり父親がリヴァプールに住めなくなり、父に捨てられたと思った子供もかなりいたとか。汚れた歴史である。




 なんといってもリヴァプールは音楽の街なので、音楽についての展示は非常に充実している。




 これはリヴァプール最初の歌うスターと言われているリタ・ローザについて。

 ビートルズの展示はもちろんたくさんある。物品の展示だけではなく、映像ブースでは無料のビートルズに関する解説ドキュメンタリーも上映されている。



 そしてリヴァプールといえばサッカーである。長きにわたるリヴァプールFCエヴァートンの熱い対抗心は有名だ。


 エヴァートンファンの女子が身に着けるらしい青い服。

 この2つのサッカーチームのファンについては映像ブースでドキュメンタリーが無料上映されており、これはサッカーが全くわからなくても面白い。サポーターたちの対立の歴史を、当時の資料とその時代の質感をまねた再現映像を使って描くというもので、対立のきっかけなんかはサイレント映画を模したけっこうセンスのいい再現映像で説明されている。狂言回しとして双方のチームのファンの少年が出てくるのだが、エヴァートンのファンの子よりリヴァプールFCのファンの子のほうが若干、いい服を着ているのがミソ。ただ、サッカー選手のしゃべっている英語は訛り(Scouse)が強烈でほとんど聞き取れなかった。
 リヴァプールは競馬でも有名なのでそれに関係する展示もある。

 楽しいことが好きなリヴァプール




 リヴァプールビートルズを輩出したくらいで文化的にはとても刺激的で豊かな街だが、景気や政情の影響をもろにくらって多数の失業者を抱えたり、昔から貧困に悩まされている街でもある。


 失業率はUKでもワーストレベル。

 組合組織率は高く、さらに社会主義の影響を受けた人たちの音楽活動なんかが活発であるのでそのせいで左翼っぽい文化が豊かというのもあるようだ。


 女性運動や労働運動。




 移民の文化。これはウェールズ系の人たち。

 プロパガンダポスター。

 2011年の暴動に関連して行われた美術企画。オールドマスターの絵画を真似た構図で地元の若者の写真をとり、警察に検問されたりした経験についてインタビューするというもの。いろいろな民族や年齢、ジェンダーの人をカバーしており、かなり興味深い。


 交通関係の展示。


 このセクションでは輸送に従事していた労働者とかの昔の暮らしぶりを再現映像で紹介するインタラクティヴな展示もある。
 今は廃止された市内列車。地下鉄じゃなく、頭上を走るものだったそうな。


 リヴァプール博物館はとにかく広く、展示も面白かった。全体的に映像やインタラクティヴ系の展示に力を入れており、とくに映像ブース以外にもいたるところに再現映像を用いた解説コーナーがあってこれがかなり気が利いている。