科学技術としての絵画〜国立新美術館「印象派を超えて―点描の画家たち ゴッホ、スーラからモンドリアンまで」展

 国立新美術館で「クレラー=ミュラー美術館所蔵作品を中心に 印象派を超えて―点描の画家たち ゴッホ、スーラからモンドリアンまで」展を見てきた。ポスト印象派あたりで技術的に大きなインパクトを与えた分割主義(「色彩を純色の小さな点に分解して描く」ということで、点描の基本となる考え方らしい)の歴史と影響を再考するというものである。点描って見た目のインパクトがかなり強烈だし、コンピュータで描く絵とも似ていて非常にモダンなものとしてとらえられていると思うのだが、そのわりにじっくり技術的背景とかについて考える機会がないものだと思うので、こういう展示はとても興味深い。

 点描というとスーラ、シニャック、あとはピサロなんかということで、海のきらめきとか田舎に遠足した時の光とかそういう自然の色が題材としてメジャーに思えるのだが、この展示を見ると鋳鉄工場の火に照らされた労働者とかストライキとかも点描技法で描いてけっこううまくいっている絵画があり、点描というのは実は画題を問わずに結構何にでも対応できる便利な手法らしいことがわかる。風景画が有名になったのは印象派なんかの類推でとらえられるようになってしまったからなのだろうか、それともやっぱり自然光について実験したいと思った画家が多かったからなんだろうか?

 あと、画面が区切られてそこに鮮やかな色が置かれるモンドリアンの色分割絵画は分割主義の強い影響下にあるっていう話はおもしろい。よく考えると基本の発想は点描とそっくりなので言われると納得なのだが、見た感じが全然違うから言われないと気付かない。

 作品自体としても楽しいものが多くて良い展覧会だったのだが、ひとつ残念だったのは、点描というのは非常に科学的に考え抜かれた絵画技法であったことがパネルと絵の比較からわかるようになっているものの、それをさらに効果的に見せるような印たらくテイヴ展示なんかの最新技術はあまり使っていないように見えることである。例えば中世のモザイクや現代のコンピュータで描いた絵と比較できるようなタッチパネルをもっと設置するとより楽しかったのではと思う。